【2010年6月28日〜7月4日】


■パキスタン、マクリスタル後に好機を狙う[100702 BBC]

(前略)最近パキスタンの諜報組織内の関係者は、パキスタンがカルザイ大統領とISIの長年の友であるハッカーニの間をとりもっているという情報を漏らしている。

しかし4ヵ月前に、パキスタンは自分たちの大事な客人でタリバン幹部司令官のバラダール師を逮捕した。彼は、パキスタンの背後でカルザイと話し合いをしていたといわれる。

これらは複雑なサインで、パキスタンの戦略地政学的、問題解決学的なメカニズムである(中略)。

パキスタンの諜報組織内の人間が、数千人のパキスタン人−−軍と一般市民−−の殺害に関与する過激派組織と「協力」していると疑われている。

ワジリスタンの信頼のおける目撃者によると、ここ数ヵ月、武装したパンジャビ・タリバンが毎日のようにトラックに詰め込まれ、検問所をいくつも通過して国境の町に運ばれて行ったという。パンジャビタリバンと地元の過激派が、軍の車を使用して国境地帯に移動していると主張するのだ。

しかし、これらの過激派の拠点を、文民政府やジャーナリスト、文民オブザーバーが入れない場所にしようとする政策は疑問視される。いったい、そこで何をしようとしているのだろうか。

「パキスタンに関して見極めなければならないのは、彼らはタリバンを支持するためにタリバンに協力しているのか、それともタリバン内に人脈を作ろうとしているか」だと、ベトラウスが火曜日に発言した。

「計算された」野望のために、パキスタン陸軍は欧米の同盟国から時間稼ぎをして金を要求してきたが、アフガニスタンの問題に何の結果を出していない。

しかしこれにより、パキスタンという国家の力も弱まった。

制度の責任が意味を失い、政治力が混乱し、経済力が失墜し、政治に対する不安が全国に広がった(中略)。アメリカがアフガニスタンからの撤退予定を立て始めた今、戦略的な目的のために国民の犠牲になっており、これは非常に危険なことだと考える人たちがいる。

このように考える者たちは、パキスタンが支持するアフガニスタンの和解計画の漏洩は、状況をさらに混乱させようとしているパキスタンの意図が見えると主張する。

彼らは、アフガニスタンにおける権力分担の取り引きにパキスタン寄りの力が発言権を持たなければ、自分たちの目的には沿わないと見る。

欧米が解決すべき難問題は、いかにしてパキスタンに強要することなしに、アフガニスタン問題から身を引いてもらうことができるかだ。

smellPakistan weighs up chances in post-McChrystal era
Ilyas Khan、Islamabad

■復讐に燃えた新たな過激派組織、台頭[100701 AP]

パキスタン政府は、軍によるイスラマバードのモスク襲撃に復讐を誓った、新しい危険な過激派組織が台頭してきたと見ている。これまで首都に対する攻撃はタリバンの仕業と見られていたが、この新しい組織が関与していたようだという。

2007年のラールマスジッドを軍が攻撃した結果、ガジ軍が台頭した。ラールマスジッドの攻撃で、武装した宗教学校の若い学生数十人が死亡し、新たな過激派世代に大きな影響力を与えた。これらのパキスタン人たちは、アフガニスタンにおけるアメリカの役割を支持した政府に裏切られたと感じ、対立するようになった。

(中略)新たな組織は、ラールマスジッド事件で死亡した学生の親戚で組織される。この戦いで死亡した自分たちのリーダーだった、モーラナ・アブドゥル・ラシッド・ガジにちなんで、名前がつけられた(中略)。

民放テレビが、奇襲部隊が建物に突入し、銃撃戦や黒い布をかぶされた女子学生の遺体が煙のあがったゲートから運び出される映像を放映した。これらの映像に国民はショックを受けた。特に宗教心の深いパキスタン人や学生の家族のショックは、大きかった。

「過激派は、ラールマスジッド事件以前は国家に戦いを布告していなかった。ラールマスジッドで、すべてが変わった」と、テロ専門家のザヒード・フセインが語る。

イスラマバードの検察官のカリーム・イマームが語ったところによると、ここ3年間イスラマバードで起きた攻撃のほとんどが、ガジ軍の仕業だという(中略)。

去年10月に世界食糧計画の事務所内で自爆した治安関係者も、ガジ軍によりリクルートされた。2007年9月にラールマスジッドの外にあった奇襲部隊の詰め所を攻撃したのも、ガジ軍だという(中略)。

これらの攻撃のほとんどが、パキスタン人タリバンの仕業とみられていた。ガジ軍とパキスタン人タリバンとの間には、密接な関係が見られる。

ガジ軍本部は、オラクザイにあるといわれる。組織の責任者はモーラナ・ニアーズ・ラヒームと言われ、ラールマスジッドの元学生である。

モスクの過激派たちとその支持者たちは、かつては自分たちを保護していた政府に裏切られたと感じた。ガジと最近釈放された弟のアブドゥル・アジズ・ガジは、政府とISIの支援を受けていたといわれる。彼らの父親のモーラナ・ムハンマド・アブドゥッラーは、ジアウル・ハク大統領と親しく、1980年代にアフガニスタンのソ連軍と戦うための人材を集めた。

元内務省幹部が語ったところによると、警察は早い段階でモスクに突入して学生たちを家に返し、宗教学校と隣の図書館をしばらくの間閉鎖したいと考えていた。警察は、アルカイダ系のジャイシェ・ムハンマドが学生たちに武器を調達していたことを察知していたが、ムシャラフはこれを拒否した。

ムシャラフは、イスラマバードでマッサージ店を営業していた中国人を、過激派たちが売春婦と非難して拉致したあとになって、やっと襲撃を命じた。犠牲者数はいまだにはっきりしない。ラールマスジッド関係者は、数百人が死亡したとと述べている。政府関係者は、100人以下だと主張している。

アブドゥル・アジズ・ガジがインタビューに答え、モスクを襲撃した場合、誰もがコントロールできなくなるような集団を作り出すことになってしまうと政府に警告したという。「私は服役していた。この集団を組織していないし、暴力を奨励していない。しかし、彼らは自分たちが受けた仕打ちに激怒している」(後略)。

garrVengeful new militant group emerges in Pakistan
KATHY GANNON、ISLAMABAD

■ラホールのスーフィー廟で爆発[100701 BBC]

ラホールのスーフィー寺院が、自爆攻撃を受けた。

木曜日の夜、ダタ・ダルバール廟で爆発があり、35人が死亡した。このほかに175人が負傷したといわれる。事件があった当時、数千人が廟を訪れていた。廟にはペルシアのスーフィーの聖人アブル・ハッサン・アリ・ハジュヴェリの遺体が埋葬されている。

犯行声明は出ていないが、タリバンとパンジャーブ人ジハード組織の関与が疑われている。

廟は、タリバンが異端と見ているバーレビ派が頻繁に訪れる。タリバンはこれと対立するスンナ派のデオバンドに属し、聖者信仰を強く否定する。

少なくとも2人の攻撃者がいたといわれるが、警察は当初爆発音が3回聞こえたと発表した(中略)。ラホール行政官のフルソ・ペルヴェズによると、中心となる広場と、廟の地下の部分で攻撃があったという。最初の攻撃者は地下にある、参拝者が寝泊まりして祈りのための準備をする場所を攻撃した。人々が逃げ出すと、2人目の犯人が上の階で爆発物を起爆させた(後略)。

garrDeadly blasts hit Sufi shrine in Lahore

■バラダールをアフガニスタンに引き渡す可能性有り[100630 Dawn]

カルザイ政府がタリバンなどの組織と取り引きすることに協力するために、パキスタンは火曜日に、バラダール師を始めとするアフガン人幹部司令官をアフガニスタンに引き渡す考えがあることを示した。

「バラダール師の引き渡しを実現するために、アフガニスタン政府と話し合いをしている」と、ある関係者が述べた。

アフガニスタンは最近になって、パキスタンで拘束されているバラダールを始めとするタリバン司令官たちの引き渡しを、再度要求していた。

これまで政府はカブールの要求を退けてきたが、アフガニスタンが態度を変えてきたことを受けて、これまでの不信感を退け、またアフガニスタンの問題解決のために重要な役割を担うことを約束されたために、今回はこの要求に答えることが期待されている。

さらに今回は、バラダールの引き渡しを法的に阻止するものがなくなった。5月にラホール最高裁判所が、彼を引き渡すことを禁じた条例を取り下げた。

今回の引き渡しが実現すれば、アフガニスタン政府が抵抗勢力と和平協定を結ぶことに、パキスタンが大きく貢献することになる。

カルザイ大統領の報道官ハミッド・エルミも、両国の内相がこの件に関して、細かい打ち合わせをしたと述べた。「この問題を解決する準備があり、バラダールをアフガニスタンに引き渡すことになる」。

タリバンのナンバー2のバラダール師は、パキスタンとアメリカの諜報組織により、2月にカラチで逮捕された。アフガニスタンはすぐにこれに反応し、カルザイがタリバンと話し合うための障壁となると述べた。

アナリストによると、バラダールがアフガニスタンに引き渡されれば、カルザイ政府が取り引きを望むタリバンと接触するために貢献するという。和解計画はアフガン人が主導するもので、アフガニスタン政府と国民の願望であることを印象づける(後略)。

ohBaradar's extradition to Afghanistan likely
ISLAMABAD:

■パキスタン、爆発ムード[100630Asia Times]

シラージュッディン・ハッカーニはここ5年の間に、アフガニスタンのガズニ、ホースト、パクティア、パクティカに大きな影響力を及ぼすようになった。またよく統率された攻撃を行なうようにもなり、アルカイダに協力してきた。

アフガニスタンを勢力的に動き回っているが、彼の本拠地は北ワジリスタンで、ここでアルカイダやアルカイダ系組織と結託している。2007年のクラーム行政区のシーア派に対する攻撃に一役買ったのも、このためである。2009年の南ワジリスタンに対する軍事作戦の際にも、逃走するマフスード族を匿った。

シラージュッディン・ハッカーニはアルカイダに協力しているが、父親のジャラウッディン・ハッカーニは、パシュトウ語を話す政府関係者と長い間友情を結んでいるために、事情は少し違う。これらの関係者は、今ではみんな政府幹部になっている。

9.11以後、パキスタンがアメリカの「テロとの戦争」に参加した際に、ジャラウッディンは数回イスラマバードに招かれ、タリバンと袂を分かつように説得された。彼は本来のタリバン運動の一部ではないが、1990年中頃にタリバンが台頭し、その後1996年にカブールでタリバンが政権を取った時に彼らに対して無条件で降伏し、彼らを支持するようになった。彼は「穏健派」タリバンとして、自身の組織を率いるようになった。

パキスタン政府関係者は、2001年にタリバン政権が転覆した際に、新アフガニスタンの首相または大統領にしてあげると、ジャラウッディンに申し出た。しかし彼はオマール師にまだ忠誠を誓っているとして、すぐに拒否した。ジャラウッディンとオマール師が分かれればタリバン運動は打撃を受けるが、彼がアフガニスタンのいくつかの州を指揮することが難しくなることも事実だ。また北ワジリスタンにある、アルカイダに支持された彼の基地を失うことにもなり、数ヵ月後には、忘れられた男になってしまったはずだ。

2010年においても、ジャラウッディンの立場は同じであり、彼の息子のシラージュッディンも同様である。

解決策を切望しているワシントンは、カルザイ大統領がパキスタンの治安組織と取り引きをして、パシュトゥーン支配下のアフガニスタン南部にいるタリバンと取り引きすることを奨励した。

カルザイは、国連のテロリスト手配書からタリバン何人かを取り下げるように要求し、タリバンやヘクマチアルのヒズビ・イスラミ系の人間数百人を釈放した。反パキスタンを掲げる政府内の重要な人物2人を、更迭さえした。国家安全理事会責任者のアムルッラー・サレは、2001年にアメリカがタリバンを排除するたに協力した、反タリバン北部同盟幹部だった。ハニーフ・アトマール内相は、アフガニスタンの共産党時代に諜報組織で働き、ソ連支配と戦うムジャヒディンと戦ったこともある。

「この決断でカルザイは危険な状況に置かれた」と、共産主義政権やソ連と戦ったムジャヒディンにも仕えたことがある、元将軍が語る。「カルザイがパキスタンと交渉することで、タリバン問題を切り抜けられるかもしれない。しかし、今度はカブール内部に入り込んだ北部同盟系の人間と敵対することになる」。

smellExplosive mood in Pakistan
Syed Saleem Shahzad、ISLAMABAD

■アルカイダ、パキスタンで殺害される[100629 New York Times]

火曜日、アルカイダと関係のあるエジプト人を含む8人が、南ワジリスタンで無人偵察機により殺害された。

(中略)無人偵察機が、ワナのそばにある建物にミサイル2発を撃ち込んだ。現場を訪れた戦闘員によると、エジプト人ハムザ・アル・ジュフィは、ワナに長い間住んでいたという。攻撃で死亡した過激派たちは近くに住む者たちだったが、2人はパンジャーブ出身の戦闘員だという。

8人の遺体の損傷は激しく、建物は全壊した。情報によると、ジュフィはカラチ周辺の宗教抗争に関与していたジュンドゥッラーという組織を率いていたという。

(中略)治安関係者によると、ジュフィは南ワジリスタンではよく知られた人物で、2008年の無人偵察機の攻撃を生き延びていた。彼の基地周辺は、モーラビ・ナジール司令官が支配する地域である。

hoonQaeda Figure Is Reported Killed in PakistanBy PIR ZUBAIR SHAH
ISLAMABAD

■アフガン・パキスタンとハッカーニの接触を知っていると米[100629 Dawn]

日曜日にCIA長官のレオン・パネッタが、パキスタンがハッカーニとアフガン政府を取り持つ役を担っていることを知っているが、過激派たちがこのような話し合いに応じるつもりはないだろうと語った。

これに先立ち『アルジャジーラ』テレビが、カルザイ大統領がシラージュ・ハッカーニと直接話し合ったと報道した。

しかし日曜日に政府関係者が『Dawn』に、カルザイとハッカーニの間で会談があった事実はないと述べた。しかし、月曜日にパキスタンのキアニ陸軍長官がカブールを訪問することは認めた。

『Dawn』は6月15日に、パキスタンはハッカーニ組織とカルザイ政府の間の仲介役を始めたことを報道した。またイスラマバードはカブールに、カルザイ政府とハッカーニの間の政治的解決策に関する計画を提示したことも報道した。

米国務省は週末に、アフガニスタンとパキスタンがタリバンと直接話し合いを行なっていると述べ、ワシントンはパキスタンの協力を期待していると付け加えた。「アフガン政府とパキスタン政府の間で話し合いが行なわれている。パキスタンがこれに協力することを期待している」と、国務省報道官のフィリップ・コロウレイが述べた。今月初めにインドも、アフガニスタンに関してイスラマバードと話し合うつもりがあると表明していた。これまでニューデリーはこれを拒否してきた。

CIA長官が日曜日に『ABC』テレビに出演し、パキスタンがアフガン政府に協力して過激派と取り引きを行なっているが、抵抗勢力側は和解に「本当の関心」を見せていないと述べた。抵抗勢力たちは、自分たちが敗北することが明らかになるまでは、和解しないだろうという(中略)。

しかし『アルジャーラ』は、カルザイとハッカーニの間で話し合いが行なわれたと主張し、パキスタン陸軍長官とISI長官がハッカーニを連れて、アフガン大統領との会談に臨んだと述べた。またテレビは、カルザイ大統領の事務所やパキスタン軍報道官のアサール・アッバス将軍が、このような会談を行なったのを否定したことも報道した。

これに先立ち『ニューヨーク・タイムズ』が、パキスタン政府関係者がアフガン政府に、自分たちがハッカーニの組織をアフガン政府内に組み込むことができると伝えたと報道した。アフガン政府関係者が同紙に語ったところによると、パキスタン人は他の関係者とも関係を探っており、キアニ将軍は個人的にタリバン首脳陣に取り引きを申し出たという。

『アルジャジーラ』はこのような報道が正しいと主張するだけでなく、カルザイとハッカーニの話し合いを行なったと伝えられたことで、パキスタンがアフガニスタン内で有利になるように、アフガニスタンと取り引きを行なおうしているという憶測が飛んでいると報道した(後略)。

hoonUS aware of Afghan-Pak contacts with Haqqani
Anwar Iqbal、WASHINGTON

Sniffed Out By Trail Dog 0-1, 2003 - 2010.