【2011年8月22日〜8月28日】
●今週の初めパキスタンで、アルカイダの新ナンバー2が殺害され、ビンラディン死亡後のアルカイダにとっては大きな打撃となったという。
●リビア国籍のアティヤ・アブドゥル・レーマンは、ザワヒリがビンラディンの座についたあと、ナンバー2に昇格した。
●米関係者によると、レーマンは8月22日の無人偵察機による攻撃で殺害された。ワジリスタンで殺害されたといわれる。
●「ビンラディンの隠れ家から押収された資料から、5月の襲撃以前からアティヤはアルカイダの作戦指揮に大きく関与していたことがわかっている。彼は組織のなかで多大な役割を果たしており、彼に取って代わる人間を探し出すことは難しいだろう」と、ある関係者が述べた。
●パキスタンの諜報関係者は、レーマンの死を確認していないが、情報源によると、8月22日の無人偵察機の攻撃で4人が死亡したと言われている。全員が地元の過激派で、アルカイダではなかったという。
●米関係者のほとんどが、レーマンをアルカイダのナンバー2としているが、彼の地位はそれほど明らかではないという。ただ組織の幹部3人のなかの1人であることは確かである。
●(中略)元リビアの過激主義者で、現在はイギリスのシンクタンクのアナリストであるノーマン・ベノトマンによると、レーマンはアルカイダの最高責任者「CEO」である(中略)。レーマンはリビア出身で、本名はジャマール・イブラヒム・イシュタウィで、ミスラタ大学の技術科を卒業してから、1988年にリビアからアフガニスタンに向かってソ連と戦った(後略)。
Al Qaeda number two killed in Pakistan this week●アルカイダのナンバー2が、先週パキスタンで、CIAの無人偵察機の攻撃で殺害された。アティア・アブデル・ラーマンの死は、テロ組織にとっては大きな打撃となる。
●ラーマンは月曜日にワジリスタンで殺害された(中略)。
●アボタバードのビンラディンの隠れ家から押収されたコンピュータのファイルによると、ラーマンはアルカイダの作戦において、重要な人物だったことが明らかになっていたという。アルカイダ指導者と定期的に接触していたこのベテラン過激派は、CIAの無人偵察機による犠牲者の数が増えていることに苛立ちを現わしていた。
●あるメッセージのなかでラーマンは、アルカイダの戦闘員は「置き換える時間もなく殺害されている」と不平を言っていたという。
●ラーマンは、ザワヒリがビンラディンの地位を引き継いだあと、ますます重要になってきていた。
●ラーマンはリビア人の爆発物の専門家で、まだ十代の頃にビンラディンに出会ったようだ。組織の財務を担当していたサイード・アルマスリが去年の5月にアメリカの無人偵察機で殺害されたあと、ナンバー3に昇格した。
●米諜報組織は、ラーマンが2006年に書いたイラクの故ザラカウィ宛の長い手紙を入手して以来、40代のラーマンを重視してきた。
●パキスタン政府関係者は金曜日に、月曜日の無人偵察機による攻撃で殺害された者たちのなかにラーマンがいることを知らされたというが、それ以上のことはわからないという。
Al-Qaeda's No. 2 leader is killed in Pakistan, U.S. officials say●土曜日にアフガニスタンから過激派数百人がパキスタン側に越境してきて、パキスタン北西部の検問所3ヵ所を襲撃して準軍隊兵士と警察官26人を殺害した。
●(中略)重火器で武装した過激派たちが、チトラルの検問所を攻撃したあとで地元の村を占拠したと、地元警察官のニザム・ハーンが述べた。パキスタン軍が応戦して、抵抗勢力9人を殺害した。過激派たちは「神は偉大なり」「ジハードよ永遠に」と叫びながら戦ったと、準軍隊のアブドゥル・ガーニ大将が語った。
●パキスタンはこの夏、アフガニスタンから過激派が何度も越境してきて治安部隊や警察官を55人殺害したと訴え、米軍とアフガン軍に戦闘員が越境しないように対処してほしいと要求していた。
●アフガニスタン側も、パキスタンが今年の夏、ロケット弾を750発アフガニスタン東部に撃ち込み、少なくとも40人を殺害したと訴えていた。パキスタンは故意にアフガニスタンにロケット弾を撃ち込んだのではないと否定したが、越境してきた過激派を狙って何発か撃ち込み、それが国境を越えたことは認めた(後略)。
Militants from Afghanistan attack Chitral posts; 26 killed●アメリカとタリバンが直接極秘の話し合いを行なっていたが、カルザイ大統領のいない場で話が進行することを恐れたアフガン政府関係者が、これを妨害していたことが判明した。
●話題は、2年前にアフガニスタン東部で拉致された、アイダホ出身のボー・バーグダール軍曹の行方と解放だったと、欧米外交筋とタリバン側の仲介者タイヤーブ・アガの幼少時代の友人が語った。米国側はアガに、バーグダールの解放のために何を望むかを尋ねた。具体的な話し合いには至らなかったが、アガはグアンタナモとバグラム空軍基地に収監されているアフガン人の解放を要求した。
●この極秘会談がメディアにリークされたために突然話し合いが中断し、アガは行方不明になった。アガと米関係者が直接話し合いを行なう場がなくなったために、オマール師と接触する機会も消えたことになる。
●(中略)外交筋や現・元タリバン、アフガン政府関係者とのインタビューから、アガは、パキスタンに戻れば報復されることを恐れ、ヨーロッパに隠れているという。すでに数ヵ月もの間、アガからの接触はないと米関係者が語った。
●米政府幹部によると、話し合いはリークのために決裂し、アガは生きているものの、消えてしまったという。アメリカは、話し合いを再び求めるという。
●(中略)最初の話し合いは2010年の終わりにあり、その後、今年の春、ドイツとカタールで少なくとも2度話し合いが行なわれた。アガの幼少時代の友人によると、彼は現在ドイツにいるという。アガがアメリカと接触していることが表に出た直後にヨーロッパに脱出したと、外交筋が述べた。
●大統領宮殿内の人物により、故意に話し合いの情報が漏らされた。カルザイがアメリカに敵意を現わし、ワシントンの計画により自分の権威が傷つくことを恐れたからである。
●パキスタンも、この話し合いからは除外されていた。アフガン政府関係者によると、タリバンがパキスタンに知らせないことにしたという。
●リークされる前、話し合いは「信頼を獲得する」ために、小さな譲歩をみせていたという。話し合いを進めるために、信頼関係を結びつつあったと、ある関係者が述べた。
●この譲歩のなかには、タリバンとアルカイダを切り離してとらえることが含まれていたという。タリバンは、アルカイダは欧米に対する世界規模のジハードを目的にしているが、タリバンはアフガニスタン内で活動することを目的とし、海外に興味をみせなかった。
●公表されていない事実としては、アガを無事にドイツに脱出させることも取り引きに含まれていた。またタリバンが第三国に事務所を設置することも、妨害しないと約束したという。
●米関係者は、当時アガの身元や、オマール師にどの程度影響力を発することができるか疑っていたが、次第に信頼関係を結んだという。例えば、話し合いが行なわれた直後、アガの語ったとおりに、タリバン系のウェブサイトに話し合いが行なわれたことが暗号の形で公表された。
●アガはグアンタナモとバグラームに収容されているタリバン戦闘員の解放を求めた。グアンタナモにまだ収容されているのは、タリバン国防省長官のムハンマド・ファジール師とタリバン諜報組織のアブドゥル・ハク・ワシーク、元ヘラート知事のハイルッラー・ハイルハワ師がいる。カルザイが任命したアフガニスタンの和平委員会は、ハイルハワの釈放を求めている。
●元米政府関係者で話し合いに精通している人間によると、アガとの接触を失ったことに米国側は激怒し、カルザイとの関係がますます悪化したという(中略)。
●平和委員会の関係者によると、アメリカ、アフガン政府、アフガン国家安全委員会、平和委員会は、それぞれ抵抗勢力内の人間と別々に極秘の話し合いを進めているという。たとえばアメリカは、ジャラウッディン・ハッカーニの弟のイブラヒム・ハッカーニと、極秘対談を行なった。パキスタン、アフガニスタン、アメリカの政府関係者も、これを認めている。
●アメリカは、パキスタンとも極秘の話し合いを行なっている。1ヵ月前、アメリカ上院外交関係委員会会長のジョン・ケリーが、湾岸国でキアニ陸軍参謀長と8時間に及ぶ話し合いを行なった。アフガニスタンの抵抗勢力との話し合いが、主な話題だった。キアニは、パキスタンがアフガニスタンの和平に向けての活動に重要な役目を与えられることを望んだという。アメリカは話し合いにパキスタンの参加は重要と見ているが、お互いに信頼していない。
●いっぽう、いわゆる北部同盟も、タリバンとの話し合いを試みている。北部同盟の軍閥にとっては、和平は自分たちの生存にかかわることである(後略)。
US-Taliban talks were making headway●アフガニスタンからタリバン戦闘員約200人がパキスタン側に越境し、兵士25人以上を殺害したと、警察と軍が述べた。
●早朝、戦闘員たちがチトラルに設置された軍の検問所7ヵ所を襲撃した。軍によると部隊が応戦して20人を殺害したが、残りはアフガニスタン側に逃げ帰ったという。
●(中略)軍によると、土曜日の攻撃で準軍隊兵士と警官25人が殺害されたというが、地元関係者は犠牲者の数は36人とした。
Taliban raid from Afghanistan kills 25 Pakistan troops●きれいに散髪し、髭を剃ってアフターシェーブの香りを残したアブ・サルマンは、アルカイダの後方支援を行ないながらこれまで長年パキスタンで活動してきたが、一度たりとも怪しまれたことがない。
●10年前にアフガニスタンからパキスタンに逃げてきたが、パキスタンの北西部を新たな拠点として、新メンバーを集めてきた。
●(中略)アブ・サルマンが北ワジリスタンにある拠点に行くために検問所に近づくと、カーステレオをかけてたばこを吸う。イスラーム主義者たちが忌み嫌うことをすることによって、疑われることはない。英字新聞を、乗り合い車のシートに残すこともある。
●30代のこの偽名のアルカイダ工作員は、ペシャワルで生活する。表向きは、中古車ディーラーである。
●こうすることで、疑われることなく車を乗り換え、パキスタンの治安軍やアメリカの偵察機から逃れられる。大学で技師の訓練を受けたアブ・サルマンは、アフガニスタンで働いていた2008年にアルカイダに参加した。「アメリカ人たちによってもたらされた痛みを、初めて知った。これまでの人生のなかで、何か特別なことをしたことがなかった」という。
●2008年の終わり頃、アフガニスタン東部で軍事訓練を受け、その後は組織のために食料や医薬品などを調達する係となった。
●(中略)北ワジリスタンには、アラブ諸国やウズベキテタン、アフリカやチェチェン、そして欧米から数百人の外国人戦闘員が集ってくる。欧米のメンバーは、ほとんどが二重国籍を持つものである。中央アジアやアフガニスタンから入ってくる者がほとんどだが、あまり経験のないものは、危険を犯して飛行機でやってくる。今年ラホールで、2人のフランス人ジハード志願者が逮捕された。
●アブ・サルマンはペシャワル・イスラマバード・ラホール・部族地帯の間を行き来する。「電話やインターネットを避けて、盗聴されたり無人偵察機で殺害されないようにしている」という。
●食料や薬品を提供するために、戦闘員の間では評判の「レッド・ブル」のようなエネルギー飲料も買うという。
●メンバーの多数が外国人だが、「次々とパキスタン人も入ってくる」という。「アルカイダは、あまり裕福ではない戦闘員や地元のタリバンのために家を借り、身代金目当ての誘拐を行なって資金を集めている」と、北ワジリスタンのマーケットを定期的に訪問するアフマッド・ジャンと名乗る男が語った。パキスタンの伝統的な服を着て、髪と髭を伸ばしてターバンを巻き、カラシニコフを肩に下げているが、地元の部族民とはほとんど区別がつかない。多くが地元の部族民の娘と結婚している。
●地元民だけが、その違いを見分けることができる。「アラブ人は肌の色は我々より白く、痩せて背が高い。歩き方も違う」と、ジャンが語る。
●ザワヒリの気配はなくても、一般の歩兵は、無人偵察機の攻撃を恐れてレストランなどに入らないようにしている。アブ・スレイマンによると、犠牲者の大半がタリバンだという。入れ替わりが激しく、メンバーが死亡するとすぐに新たな人間にとってかわる。
●アルカイダはジャラウッディン・ハッカーニの保護を受けている。「この10年ですべてが変わった。部族民指導者の大半が殺害され、部族のシステムはイスラーム主義者のために変わった。結婚式で踊ることも音楽を演奏することも禁じられている」と、ミランシャーの店員が語る。「危険を冒した者は、家族の一員を拉致されたり叩かれたり殺害される」。
Qaeda firmly rooted in Pakistan tribal fiefdom●TTP副指導者モーラビ・ファキール・ムハンマドが黄泉の国から蘇り、バジョールでタリバンのFMラジオに登場した。
●ファキールは2010年3月5日に、パキスタン軍による戦闘ヘリコプターの攻撃で死亡したと報道されていたが、今年の7月、ラジオ番組に躍りでた。
●パシュトゥ語によるこの番組は、午後12時から3時、6時から8時に放送される。ジハードの歌やジハードに呼びかける扇動的な演説、地元の和平委員会に対する脅迫などからなる。
●イスラマバードは2008年8月にバジョールに対する軍事作戦を実施し、2010年3月にTTPを制圧したと勝利宣言を出した。兵士80人と地元アルカイダ司令官のアブ・サイード・アルマスリを含む過激派1000人を殺害したという。
●「ファキールのラジオ番組は、サママン、サラーロ、マモンド、パシェットなどで聴くことができるが、行政の中心であるハールには電波が弱いためにほとんど聴こえない」という。
●(中略)ハールの住民によると、ファキールはタリバンの番組に出演して話をしていたという。「私は逃げたのではなく、ジハードのためにバジョールから別の場所に移動した。今再び故郷にもどり、イスラームの敵を懲らしめる」と語ったいたという。
●ファキールはアフガニスタンに隠れているといわれる。地元の情報源によると、番組はアフガニスタンのクナール州のジャングル地帯であるマンロから放送されている(後略)。
Jihadi jingles jangle tribal nerves