【2011年10月31日〜11月6日】


■パキスタン、アメリカの圧力よりも過激派組織との深い絆[111031 New York Times]

ヒラリー国務省長官を始めとするオバマ政権関係者が10月にパキスタンを訪れ、ハッカーニ組織をアフガニスタンにおける和平の話し合いの場に送り込むか、パキスタンの部族地帯で彼らと対戦するために協力するか、どちらかを選択するように迫った。

しかし、パキスタンがアメリカをがっかりさせる要因はいくつもある。ハッカーニの首脳陣が必ずしも部族地帯に隠れる必要性はなく、イスラマバードやラワルピンディを良く調べればいいだけだ。それほどハッカーニとパキスタン軍や諜報組織との関係は深い。

ハッカーニの組織がパキスタンで自由に行動していることは、去年の7月にも目撃されている。パキスタン最大の宗教学校であるダルール・ウルーム・ハッカニアの卒業式だ。

イスラマバードからたった1時間しか離れていないアコーラ・ハタックに集った数千人の中に、ハッカーニ家の幹部もいた。

ハッカーニ家は卒業式に数時間参加し、昼食後、イスラマバードのナンバープレートのついた車で去って行った。パキスタンの諜報関係者がこれをモニターしていないはずがない。

マフィアのように組織をはりめぐらすハッカーニ家は、イスラマバードなどを含むいくつかの地域に家を持ち、ラワルピンディの軍の施設を訪れたり、部族民の集会に参加したり、巡礼のために海外に出たりするという。

式の参加者の中には、ジャラウッディンの弟のハリル・ハッカーニがいた。彼は組織の資金のやりくりを管轄する重要な役目を担い、たびたびアラブ首長国連邦を訪れている。2月に国連は彼を、アルカイダと関係するとして制裁リストに加えた。

彼とともに、ジャラウッディンの2人の息子がいた。1人はナシールッディン・ハッカーニである。彼はパキスタンの諜報組織との連絡係であり、資金の送金を担当すると言われる。

経済や財源などに関わる組織の幹部、例えばハリル・ハッカーニやジュラウディンの別の兄弟のイブラヒム・ハッカーニなどは、イスラマバードに長い間住んできたと、ハッカーニ組織を調査するプリンストンの対テロ専門家のヴァヒッド・ブラウンが語る。

「彼らは都市部に住んでいると思う」と、ブラウンは語る。イブラヒム・ハッカーニは20年前から、イスラマバードに住んでいたという。去年ウィキリークが発表した極秘書類から、ハッカーニ家の2人がパキスタンからアラブ首長国連邦をたびたび訪れていることがわかる。イブラヒム・ハッカーニは8月の終わりに、取り引きのために米関係者とも会っていると、ブラウンが語った。

欧米のアナリスト2人によると、父のために組織を運営するシラージュッディン・ハッカーニはハイバル・パフトゥーンフワを自由に動き回るという。「彼が動き回れるという事実は、彼が保護されていることを示す」と、1人が語った。

(中略)ハッカーニには戦闘員を訓練し、資金や物資を受け取るための拠点が必要である。これらはパキスタン、特に北ワジリスタンにある。いっぽうパキスタン軍は、アメリカがアフガニスタンを去ったあと、アフガニスタンに影響力を発揮できる駒が必要だ。これがハッカーニである。

パキスタンが最も恐れるのは、強力な、中央集権的・ナショナリスト国家、アフガニスタンである。米国人たちが作ろうとしている国家そのものである。そのようなアフガニスタンは、国境の両側に広がるパシュトゥーン地域の領土を主張してくる可能性がある。パシュトゥーン族が、いつか独立国家を求めるのではないかとも、恐れる。

そういう点から、ハッカーニは重要だ。彼らはパシュトゥーンであるが、ナショナリストではない。クエッタ・シューラよりも、信頼できるとさえ見られている。また、パキスタンのライバルである、インドに対する防波堤ともなる。

この政策にも、代償を払わなければならない。去年の卒業式には、アフガン人とパキスタン人タリバンの両方が参加した。パキスタン軍は「いいタリバン」、つまりハッカーニのようにアフガニスタンで戦うタリバンと、「悪いタリバン」、つまりパキスタン国家と戦争状態のタリバンとの間を区別する。しかし、タリバンの間ではこのような区別はないと、2人のタリバン内部の人間が語った。

最近行なわれている自爆攻撃のほとんどが、北ワジリスタンでハッカーニと拠点を共有する、パキスタン人タリバンの仕業である。パキスタン人タリバンのハッカーニは、資金、諜報情報、自爆者たちを融通し合う。

パキスタン軍内部の人間は、この2つの抵抗組織が一体化していることを認識しているが、ハッカーニに対する協力態勢は変わらない。「ハッカーニがダブルゲームを行なっていることは知っている」と、北ワジリスタンのパキスタン軍関係者が去年語った。「我々は彼らに協力し、彼らは我々の敵TTPに協力している」。

しかしパキスタンの諜報組織も、ダブルゲームを行なう。クリントン訪問で米国側とパキスタン側が何を話し合ったかは明らかではないが、「パキスタンがハッカーニと真剣に対戦する可能性は、ますますなくなったようだ」と、『News』紙の編集者メフリーン・ザーラ・マリックが語る。

アメリカの要求に答えるどころか、「これまで以上圧力をかけられているにもかかわらず、政府はハッカーニが自分たちの駒であるこを認めさえしているように見える」と語る(中略)。パキスタン軍が彼らに対して行動しないことの理由は簡単だ。将軍たちは「『我々には彼らが必要だ』と思っている」のだという。

smellFor Pakistan, Deep Ties to Militant Network May Trump U.S. Pressure
PIR ZUBAIR SHAH and CARLOTTA GALL

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