【2011年11月21日〜11月27日】


■NATOの襲撃で兵士28人死亡後、パキスタン補給線を遮断[111126 Reuters]

NATO軍のジェット戦闘機が、土曜日にアフガン国境近くにあるパキスタン北西部の前哨基地2ヵ所を攻撃して兵士28人が死亡し、両国の関係が危機に直面している。

パキスタンは、NATO軍にとって重要なアフガニスタンに入る補給路を封鎖することで、報復している。今回の攻撃は、9.11以後パキスタンがワシントンと同盟を結んで以来、最悪の出来事となった。

(中略)アフガニスタンにいるNATO主導軍報道官は、現場の軍からNATO軍の航空機の援護の依頼を受け、パキスタン兵を殺害した可能性もあることを認めた。「近接航空支援を依頼された戦略的な展開のなかで、パキスタンに犠牲者が出た可能性がある」と、ISAF報道官のカルステン・ジェイコブソンが述べた。犠牲者の数は確認できていないが、現在ISAFが調査中だという。「どの程度、どのような規模かはわからない」という。

ギラニ首相は「パキスタンの主権に対する攻撃だ」と述べた、「パキスタンの主権と独立に害が与えられることは許さない」という。

(中略)軍関係者2人によると、アフガン国境から2.5キロ離れた前哨基地に対する攻撃で、兵士28人が殺害され、11人が負傷したという。パキスタン軍は、24人が殺害され13人が負傷したと発表した。

実際に何が起きたかは明らかではないが、パキスタン軍がタリバンと戦っているモーマンドのバイザイ地域で、午前2時頃に攻撃があった。国境の反対側は、ここのところ激しい戦闘が続いているクナール州である。

「パキスタン軍はNATO/ISAFの攻撃に対して、利用可能な兵器をすべて使ったすぐに防衛した」と、パキスタン軍が発表した。

(中略)前哨基地には武装軍が約40人いた。軍関係者2人が死者のなかに含まれている。「彼らは何の理由もなく我々の基地を攻撃し、就寝中の兵士を殺害した」と、パキスタン軍幹部関係者が述べた。

アフガニスタンとパキスタンの国境は曖昧で、アフガン側とパキスタン側の地図は数キロ単位で異なる場合があるという。

しかしパキスタン軍報道官のアッバス准将によると、NATO軍にはパキスタン軍の基地を明記した地図を渡しているという。「片方が明らかなことだと言えば、明らかなことだ。前哨基地は記され、向こうの地図に印がつけられるように手渡してあり、その場所は明らかにパキスタン国内である」。

今回の出来事は、国境のコントロールと協力を話し合うために、NATO軍のアレン将軍とキアニ将軍が話し合いを行なった直後に起きた。

(中略)攻撃があった数時間後、アフガニスタンに向かうNATO軍に対する補給トラックと燃油トラックが、カイバル行政区のジャムルッドで止められた。バローチスタン集のチャマンの国境も閉鎖された。「補給線を遮断し、タンクローリーやトラック40台がジャムルッドの検問所から引き返させられた」と、政府幹部が語った(後略)。

hoonPakistan stops NATO supplies after raid kills up to 28
Shams Mohmand、YAKKAGHUND

■パキスタン、国境攻撃の後、NATOとアメリカに調査を要求[111126 BBC]

パキスタン軍の前哨基地が攻撃され24人が殺害されたあと、パキスタンはアメリカとNATOに調査のために全面協力を要求した。またギラニ首相は、アフガニスタンに入るNATO軍の補給線を遮断することを決めた。

(中略)NATO軍の車輛は、トルハムとチャマンの国境を通過できなくなっている。またアメリカには、アメリカが無人偵察機を飛ばすために使用しているシャムシ航空基地から15日以内に引き上げるように要求した。ただし、同じような要求はこれまでも出ており、基地はすでに無人である可能性がある。パキスタン政府は米大使を召喚した。

夜間の攻撃は、アフガン国境から2.5キロパキスタン側に入ったサララ検問所で起きた。

パキスタン軍によると、ヘリコプターと戦闘機が、約300メートルの間隔で山の頂上に設営されていた国境の前哨基地2ヵ所を攻撃した。パキスタン政府関係者によると、現場では過激派の行動はなく、兵士のほとんどが就寝中だった。またNATO側には前哨基地の場所を示す地図が渡されており、発砲する権限はないという。

NATO軍のジェイコブソン将軍によると、アフガン軍とNATO軍の合同軍が現場にいたが、「地上で戦術上の展開が発生した」と述べた。近接航空支援が呼ばれ、「このために犠牲者が出た可能性が高いと思っている」という。

軍関係者がパクティア州にいる『BBC』のクエンティン・ソマーヴァイル記者に語ったところによると、米軍・アフガン軍の特殊部隊がこの地域で活動しており、タリバンの訓練所があると思われているという。彼らによると、一行はパキスタン国内から発砲され、NATOの本部から報復する許可を得たという(後略)。

hoonPakistan orders Nato and US review after deadly border strike

■パキスタン大使、メモに関して更迭[111122 New York Times]

パキスタンの駐米大使フセイン・ハッカーニが火曜日に辞任した(中略)。先週辞任を申し出ながらも、留任を期待していた。しかし火曜日に首相が、疑惑に関する調査が「正式に行なわれるように」辞任するべきだと述べた。

(中略)一部の人間は、ハッカーニ氏をアメリカの代弁者と見ている。また大使の座に就く前から陸軍に批判的だったために、軍内部に敵が多い。アナリストの中には、国内に権力をふるう軍指導者たちが、ハッカーニを排除するように政府に圧力をかけたとみている。

火曜日に米関係者は、ハッカーニの退出でアメリカとパキスタンとの関係が再び複雑化する可能性があると述べた。

政治コメンテイターたちは、ハッカーニを大事にしていたザルダリ大統領は、保身のために彼と距離をおいているという。

(中略)「ハッカーニが実質的に更迭されたという事実は、風がどちらの方向に吹いているかを明らかにする」と、パキスタンの日刊紙が書いた。「軍はハッカーニや彼とワシントンDCとの関係を快く思っていなかった」。ハッカーニをあまり良く思っていないギラニ首相に問題を預けることで、ザルダリはすでに悪化している文民政府と軍との関係をさらに悪化させないようにしている(後略)。

hoonPakistani Ambassador Is Forced Out Over Memo
SALMAN MASOOD、ISLAMABAD

■パキスタンの駐米大使ハッカーニ、「メモ」で辞任[111122 BBC]

パキスタンの駐米大使が、ワシントンにパキスタンの軍に対して助けを求めたという疑惑に責任をとって辞任した。

(中略)大使は、アメリカを拠点とするロビイストの主張を否定している。事件は、すでにぎくしゃくしているパキスタンの文民政府と軍指導者との間の関係をさらに悪化させた。

ハッカーニは今週初めにイスラマバードに召喚され、パキスタンの文民指導者幹部と会ったあとに辞任を促されたと、軍と諜報組織関係者が述べた。

国営テレビによると、辞任は受入れられた。首相事務所によると、ハッカーニ氏は辞任を促されたという(中略)。

ハッカーニ氏はザルダリ大統領に非常に近い人間であるが、メモの草稿にも送ることに関与したたとはないと繰り返し主張している。

しかし、アメリカの元統合参謀長のマイケル・ミュレンは、この極秘メモを受け取ったことを認めている。ただメモには注意を払わず、行動は起こさなかったという。問題は10月10日にパキスタン系米国人ビジネスマンのマンスール・イジャーズが、『フィナンシャル・タイムズ」に記事を投稿したことに端を発する。

(中略)『BBC』のサジッド・イクバルによると、今回の論争は今週末になって、イジャーズ氏がメモの内容にザルダリは一切関わっていないと明言し、フセイン・ハッカーニを名指ししたことで急展開した。「メモの内容はすべて彼が作ったものだ」と、イジャーズが報道機関に語った。

(中略)さらに野党議員で元クリケット選手のイムラン・ハーンの発言で、問題が複雑化した。イムラン・ハーンは、イジャーズがハッカーニの名前を公にする前の10月30日に、ラホールで行なった大きな抗議デモで、彼が「メモ問題」の中心人物であると名指しした。ハーンは、なぜこのような行動をとったかは明らかにしていない。

さらに10月22日に、パキスタンのISI長官のシュジャ・パシュがロンドンに飛んで、イジャーズと会っている。これは『フィナンシャル・タイムズ』に記事が掲載されてから、2週間もたたない時期だった。

(中略)関係者によると、イジャーズが主張する陰謀には、ザルダリ政府が、ビンラディンの隠れ家が襲撃されたあとに軍のクーデターが起こらないように、事前にアメリカの協力を仰ぐようすが明かされている。

パキスタンの報道機関や政治家の一部は、ハッカーニはこれまでパキスタンの文民政府とオバマ政権との間の仲介役として長い間動いてきたために、メモ作成のための中心人物の役割を果たしたと非難している。

しかし、彼は誤ったことをしていないと主張する。「あなたからもパキスタン政府内の人間からも、メモの作戦を依頼されたことはなく、また私はメモを作成したり、それを送ったこともない」と、ザルダリ大統領に送った辞任の申し出の手紙の中で書いている(後略)。

smellPakistan US ambassador Haqqani resigns over 'memogate'

■TTPと政府、「和平の話し合い」[111121 Dawn]

パキスタン人タリバンは政府との和平の話し合いを行なうために停戦を宣言したと、幹部司令官が語った。司令官によると、先月から停戦が国内全体で有効になっているという。

「和平プロセスのために、我々はパキスタン軍や政府施設を攻撃していない」と、ハキームッラー・マフスードに近い司令官が述べた。

(中略)彼の主張は、政府関係者が最近タリバン指導者たちと会い和平協定に関して話し合っていると語った、匿名のタリバンや諜報関係者の主張と一致する(後略)。

hoonTTP, govt 'holding peace talks'
ISLAMABAD

■タリバンとパキスタン、和平に向かって話し合い開始か[111121 Reuters]

パキスタンのタリバン運動は、米国の支援を受けた政府と和平に向けての話し合いを勧めていると、タリバン幹部司令官と仲介者が月曜日に述べた。

(中略)これまでTTPとの話し合いは失敗に終わり、組織が時間をかせぎ、拠点を広げ、新たな攻撃を行ない、人々に自分たちが解釈するイスラームを広めることになる結果に終っていた。

話し合いは今のところ南ワジリスタン地域に限定されているが、今後範囲が広げられる可能性がある。

アルカイダと近い関係にあるタリバンは、囚人の釈放を含めたいくつかの要求を行なったと司令官が述べた。

仲介に入っているパシュトゥーン族の人間が、話し合いは「非常に難しい」と述べた。「確かに話し合いが行なわれているが、初期の段階にすぎない。出口が見えてくるか、今後注目される」と、あるタリバン幹部司令官が述べた。「現在南ワジリスタンのレベルの話し合いだ。もし成功したら、部族地帯全域に関する話し合いとなる」と、国境沿いのパシュトゥーン族の居住地に関して言及した。

(中略)「アメリカは不愉快だろう」と、タリバンの専門家であるラヒムッラー・ユースフザイが述べた。「パキスタンが過激派に対する圧力を弱めれば、過激派は注意をアフガニスタンに向けるだろう」。

政府が9月にアメリカとの関係悪化に関した際に全党会議を開き、過激派との話し合で平和を実現すると発言してから、和平協定が結ばれる可能性が話題になっていた。「そもそも戦いたくなかった」と、あるタリバン幹部司令官が述べた。「我々の目的は、アフガニスタンから外国軍を追い払うことだった。しかし、パキスタン政府がアメリカを支持したために、戦わざるを得なかった」。

(中略)「非常に難しい段階にきている。これまで2ヵ月の間に3回話し合いを行なったが、まだ結果が出ない」と、話し合いに関与している部族民長老が述べた。「出口がみえるようになるかわからないが、正しい方向に向かっていることは確かだ」(後略)。

hoonTaliban, Pakistan said to have started peace talks
Michael Georgy and Qasim Nauman、ISLAMABAD

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