【2011年12月19日〜12月25日】


■アメリカのタリバンとの取り引き、決裂[111223 Washington Post]

オバマ政権はアフガニスタンのエンドゲームを押し進めるための一環として、グアンタナモ収容所から5人のアフガン人を引き渡すことと引き換えに、タリバンが国際テロリズムを放棄することを公言するという条件で、先月タリバンの仲介者たちと取り引きを交わす手前まできていた。

取り引きでは、タリバンが事務所を開こうとしていたカタールで囚人たちを軟禁するほか、双方とも何らかの行動をとることになっていた。しかし、現在までグアンタナモからで出た囚人は誰もいない。

1年近く続いていた和平交渉の結果、両者の間にかつてないほどの歩み寄りが見られたが、カルザイ大統領がその内容を受入れることに躊躇したために、結果的に失敗に終わった。

「今のところ、話し合いは中断した」と、オバマ政権幹部が語った。「誰もが息をついている」。タリバンとの接触は、新年早々に再び始まることが予測されている。

(中略)米司令官たちによると、タリバンが話し合いに興味を持ったのは、同盟軍が戦場で優勢になったからだと語る。しかしタリバンもアメリカも、戦いは不完全のまま終わると見ていることには変わりない。タリバン指導者たちは、同盟軍の撤退後に起こることが予測される抗争を考えると、今すぐに政治的な和解を行なったほうが有利とみているようだ。

(中略)囚人の引き渡しは、今年になってアメリカの代表団とタヤーブ・アガが率いるタリバンの代表団の間で交わされた、少なくとも6回の話し合いのなかで決められた。これとは別に、ドイツの関係者もタリバンの代表者たちと話し合いを行なっている。「信頼を築く能力のある、適当な人間と話し合っていると思う」と、ある政権幹部が語った。

「我々が望む事柄がわかっている。国際テロリズムに対する否定声明だ」。これにより、民衆はアルカイダと決別するだろうと、この関係者が述べる。またアフガニスタンの立憲的民主主義への支持、そして「アフガン政府との取り引きを介することへの同意」だという。

「彼らはグアンタナモで拘束されているアフガン人20人のうち、5人を引き渡すように要求している」。「カタールに事務所を開くことを希望している。我々は了解した。しかし、この事務所はアフガン人たちと話し合うためのものだ。プロパガンダや人材募集や、別の政府を作るためではなく、アフガニスタンの未来を話し合うためのものだ」。

秋に入ると話し合いは急激に進み、12月5日にドイツのボンで開催された国際会議で取り引きの締結を発表できるのではないかと、関係者は楽観的になっていた(中略)。

しかし、まずアメリカの議員たちが反対し、タリバンを含めてグアンタナモの囚人の移送を禁じる議会の規制に引っかかるなど、問題点が明るみに出た。米国は囚人釈放を拒み、アフガンの刑務所に引き渡すことにも難色を示した。その結果、タリバンを受入れることに同意したカタールが、囚人たちを軟禁することを申し出た。

しかし取り引きに調印する最後の段階になって、カルザイが拒否した。

「プロセスのなかで、さまざまな人間がさまざまな段階で、難色を示した」と、あるヨーロッパの関係者が語った。「最後の瞬間は、彼だった」。

関係者たちは、カルザイはこのプロセスの説明を詳細に受けていたが、彼の態度は流動的だったという。カルザイは、タジークを始めとする北部の人間の支持を獲得することに失敗したという。とくにアフガン和平委員会議長だったブルハヌッディン・ラッバーニが暗殺された後、問題が顕在化した。

取り引きが失敗したあと、さまざまな障害が起きた。先週アフガニスタンは、駐カタールアフガン大使を召喚した。カタールがカブールに詳細を告げずに行動していたためだという。カルザイの事務所は、対抗勢力は「戦いやアフガン民衆に対する暴力沙汰を止めるまで」、タリバンの事務所を設置することは許さないと述べた。また事務所を設置する場合は、アフガニスタンかサウジアラビアかトルコで、カタールではないという。

上院議会の指導者たちが今後このような取り引きが交わされるかどうか問われたとき、議員の1人、サックスバイ・チャンブリスが、タリバンとの取り引きはあり得ないと述べた。米大統領選が近づくにつれ、このような話し合いに対する圧力は増してくるだろう(後略)。

hoonU.S. deal with Taliban breaks down
Karen DeYoung

■米、過ちを認めるが、パキスタンが国境で先に発砲したと主張[111222 New York Times]

ペンタゴンの調査によると、11月26日にパキスタン兵26人が米軍戦闘機に殺害されたのは、両国の過ちに起因するという。アメリカが今回の衝突に関して責任を認めたのは、初めてのことである。

パキスタンが先に発砲し、アメリカはパキスタンに同盟軍を攻撃していると再三警告したあと、自己防衛のために攻撃したという、今回新たに判明した2つの点に関して、パキスタンはさらに憤慨する可能性がある。

11月26日の深夜過ぎにアメリカが1時間以上にわたって行なった3度の空爆は、パキスタン兵が、国境で活動するアフガンと米特殊部隊に発砲してきたために、正当的であるという。

(中略)パキスタンは自国軍は過ちを犯しておらず、最初に発砲してもいないと主張してきた。パキスタンの関係者が米軍に、自分たちの前哨基地が同盟軍に攻撃されていると警告したあとも、米軍は故意に基地を攻撃したと述べた。オバマ大統領の完全なる謝罪がない限り、何も受入れないという。

国防省の声明にはある種の謝罪は含まれていたが、パキスタン側が要求するようなものではなかった。

(中略)パキスタン軍のアッバス報道官はテキストメッセージで、「パキスタン陸軍は米/NATOの調査結果に同意しない」と述べている。

調査の責任者である空軍のステファン・クラーク准将によると、アフガニスタンのクナール州とパキスタンのモーマンドの国境付近で活動していたアフガン・米軍パトロール隊は、11月26日の深夜にパキスタンの国境前哨基地の少なくとも1ヵ所から、機関銃と迫撃砲攻撃を受けた。120兵からなるアフガンと米特殊部隊は、抵抗勢力による攻撃と思い込み、空からの援護を要請した。

NATOは、情報が漏れることを恐れ、国境付近で活動していることをパキスタンに知らせていなかったという。したがって、パキスタン兵は同盟軍が自分たちの基地の近くにいることを知らなかったはずだという。NATOとパキスタン軍は、国境付近での活動位置を正確に知らせる義務がある。

アメリカの2つ目の過ちは、戦闘機が要請されたときだった。米国人たちはパキスタン軍に、アパッチ・ヘリコプターとAC-130戦闘機が攻撃する標的の位置の情報を誤って伝えたという。そのうちのひとつは、9マイルの誤差があった。

パキスタン側にも過ちがあった。パキスタンはNATOに、3ヵ月前から国境の前哨基地を設置していたことを伝えていなかった。両国とも、国境付近に新たな前哨基地を設置した場合は、通告することになっている。

クラーク将軍によると、地上軍がパキスタン側から最初に攻撃されたために、米軍機がフレアで合図し、F15戦闘機が低空飛行で超高速で飛んで警告した。どちらも、タリバンが行なうようなことではない。

(中略)それでもパキスタン軍が攻撃を続けた理由は、明らかではない。しかし空爆後、ワシントンのある米関係者が、次のように語っている。パキスタン人たちはタリバンが国境前哨基地を攻撃してくるという情報を得ていた。したがってパキスタン兵たちは、アフガン軍と米軍をタリバンと間違えた(後略)。

hoonU.S. Concedes Error, but Says Pakistan Fired First at Border
ERIC SCHMITT and MATTHEW ROSENBERG、WASHINGTON

■極秘米・タリバンの話し合い、転機を迎える[111219 Reuters]

米政府関係者によると、アフガニスタンのタリバン抵抗勢力との極秘の話し合いを10ヵ月続けた結果、問題解決が可能かどうかがわかる、重要な分岐点に到着したと語った。

極秘外交の結果、アメリカはグアンタナモ刑務所にいる多数のタリバンを、アフガン政府に引き渡すことを考えているという。

タリバンの代表には、歩み寄るように要求している。国際テロリズムを非難し、カルザイ大統領が主導する政府との正式な政治対話を開始する準備があることを公言することなどが、歩み寄りの条件に含まれる。

(中略)米政府関係者は、ドイツとドーハで、オマール師の代表団と6回にわたる会談を行なったという。

(中略)「現在、新たな局面に移行しようとしている。信頼できるパイプが確立され」、信頼確立を「提供できるような状況」にあるという。

これまでも米・タリバン間の接触は報告されていたが、外交の進み具合や囚人の引き渡しなどが明らかになったのは、今回が初めてである。

現在グアンタナモにはアフガン市民20人足らずがいる。誰が引き渡されるか、またカルザイ政府がこの囚人を拘束し続ける保証があるのかどうかは、明らかではない(中略)。

これまでの和解プロセスは、常に失敗してきた。タリバン代表が偽物だったこともあった。タリバン内部の亀裂も明らかになった。また、パキスタンの介入もある。

(中略)米関係者によると、タリバンには資金集めやプロパガンダを広めたり、陰の政府を設立してはならないと言ったという。今後の話し合いに専念し、タリバンがアフガン政府に参加できる新たなステージを築くために、活動しなければならない。

日曜日にアフガニスタンの高等和平委員会幹部が、タリバンはイスラーム国家に新たな事務所を設置することを望んでいると述べた。

しかし、多角的外交のデリケートな面を憂慮して、カルザイ大統領は、タリバンの事務所設置を準備していると報道されたカタールの、アフガニスタン駐カタール大使を召喚した。アフガン政府関係者は、自分たちが蚊帳の外に置かれていると訴えた。

グアンタナモに拘束されているタリバン囚人の引き渡しに関しては、米議会で「国家的決議」を行なってから決定すると、強調した。

(中略)米関係者は、オマール師の秘書だったタイーブ・アガと会い、パキスタンがお膳立てにより、ハッカーニ組織創設者の弟であるイブラヒム・ハッカーニとも会った。カブールの米大使館を攻撃したり、パキスタンのISIと近い関係にあるハッカーニ組織との対話の窓は、まだ開いたままだという。

米関係者は、これらの動きに関してカルザイに常に報告し、抵抗勢力側と会うときには、事前に通告しているという。これらの会談に政府関係者も参加しているかどうかは、明らかではない。

新たな局面を迎えた和平プロセスは、もし成功すれば、次のステップに進むことを可能にさせ、アフガン政府とタリバンが、アメリカのお膳立てで話し合うことになる。「だからこそ、非常にデリケートだ。2つ目の局面に到達しなければ、良い結果に到着しない」と、ある米関係者が述べた(後略)。

hoonExclusive: Secret U.S., Taliban talks reach turning point
Missy Ryan, Warren Strobel and Mark Hosenball、WASHINGTON

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