【2004年12月13日〜12月19日】


■アフガン軍閥の資産、凍結[041218 BBC]

国連によると、イランはアフガン軍閥のヘクマチアルの口座を凍結したという。

ヘクマチアルの率いるHezb-e-Islamiは、アフガニスタンにいるアフガン軍を攻撃しているといわれる。また、イランはアルカイダ工作員たち数人を逮捕したと、国連のMunozが述べた。ただ何人逮捕されているのか、凍結された口座の金額がどの程度だったのかについては、はっきりさせなかった。

hoonAfghan warlord assets are frozen


■ムシャラフ、陸軍長官を辞せず[041218 Reuters]

ムシャラフ大統領は陸軍長官を辞任するという以前の約束を取り消し、今後もその座を保つと述べた。「12月31日以後も軍服を脱がない」と、金曜日のテレビインタビューで述べた。

イスラーム政党Muttahida Majlis-e-Amal(MMA)はこれに抗議して、大掛かりな反対運動を展開している。しかしオブザーバーによると、大きな影響力はないだろうという。

hoonMusharraf won't quit as army chief
By Faisal Aziz、KARACHI


■アフガニスタンの脱獄犯、取り調べられる[041218 AP]

アフガニスタンの刑務所で発生した銃撃戦で負傷した容疑者が、4人の仲間たちとともに脱獄しようとしていたのか、同刑務所に収監されているアメリカ人囚人3人を襲撃しようとしたのか、取り調べられるという。

当初4人の容疑者、パキスタン人3人とイラク人1人がカブール刑務所を脱獄しようとしたとされていたが、刑務所の責任者Abdul Salam Bakhshiによると、もう1人が負傷したという。

「これから彼の取り調べが行なわれる。なぜ攻撃したのか、何が目標だったのか。脱獄しようとしたのかを取り調べる」と述べた。同刑務所に収監されている3人のアメリカ人を襲撃しようとした可能性も、捨てきれないという。

hoonAfghan Jailbreak Inmate to Be Questioned
By PAUL ALEXANDER、KABUL


■アブドゥッラー・マフスード逮捕に500万ルピーの懸賞金[041218 News]

武装戦闘員のアブドゥッラー・マフスードに500万ルピーの懸賞金が掛けられたが、いまだに行方はわからない。

hoonRs 5m reward for Abdullah Mahsud's capture
By Sailab Mahsud、TANK


■将軍の見解[041217 Asia Times]

イスラマバードとワシントンは、パキスタンがイランの核開発計画に関するすべてのデータを提供する見返りとして、アメリカは闇マーケットを通してイランに核の拡散を行なった容疑者に対して行動しない、という取引に合意した。

2003年中庸、パキスタンのアブドゥール・カディール・カーン博士を中心とした世界的な核拡散組織が発覚した。CIAの報告によると、カーンはイランに濃縮ウラン遠心分離器だけでなく、核燃料の材料とともに核兵器のデザインそのものを売ったという。また、北朝鮮やリビアとも取引をしていたようだ。

この組織が拡大していったのは、1987から2003年にかけてである。組織の発覚以後、パキスタンの軍事政府は責任をすべてカーンになすりつけた。軍の関与しないところで、カーンは行動したというのだ。カーンはテレビに出演して、謝罪した。しかし欧米では、将軍たちの関与しないところで組織が活動していたとは信じがたいと、とらえられている。

1988から1991年にかけて陸軍長官だったアスラム・べーグ将軍が、このネットワークの中心人物だったと噂される。しかしある情報源によると、ベーグ将軍だけが動いていたと考えるのは間違えだという。もっと組織立ったものだったらしい。軍は、カーンや彼の部下たちを何度もイランに送り込んでいたことは、明らかだ。

以前アメリカは、パキスタン軍がどの程度核の拡散に関わっていたかに関心を示していたが、今はイランが現実的に核兵器計画を進めているのかどうか、その証拠を見いだすことに専念している。イスラマバードはこのことに関して、カーンを取り調べようとしている。

このような状況のなかで『Asia Times』は、ラワルピンディにいるベーク将軍と電話インタビューした。

・Asia Times……アメリカのシンクタンクは、あなたが核拡散に一役噛んでいたとみているが、そのことに関してコメントは?

・ベーグ……私が陸軍長官のとき、パキスタンは原子力計画やその供給システムに大きな飛躍があった。私の役割は、これに関して限定されている。

・Asia Times……一部では、あなたが核開発計画をイランのような国家に売ったとみているが。 ・ベーグ……全く根拠のないことだ。本当だとしたら、アメリカが私を見逃すはずがない。私がアメリカに対して距離を置いていたので、私を恨んでいるのだ。

・Asia Times……しかしパキスタンの核開発は、軍のもとで行なわれました。カーンのような個人が16年間も、1人で行動できるでしょうか。

・ベーグ……カーン博士は、特別の地位や権力をもっている。我々は彼を信頼して、何もかも任せた。彼が権力を誤った方向で用いるとは思わなかったのだ。

・Asia Times……パキスタンの核拡散問題の取り扱い方に満足していますか?

・ベーグ……もちろん。パキスタンはこの組織に関わった者たちを、すべて明らかにしている。カーン博士は関与を告白した。今我々は、アメリカをカーン博士から引き離し、我々自身で問題を解決している。

・Asia Times……パキスタンが自国民を国際社会にさらし者にしたことで、パキスタンの核開発計画は脅かされないでしょうか?

・ベーグ……どちらにしても、彼らは世界にさらし者になることになったのだから。他に方法はなかった。私は、ムシャラフの政策に賛成だ。今我々は、組織全体を明らかにすることに協力し、パキスタンの核開発計画に関する驚異はすべてなくなるだろう。パキスタンの科学者たちが核拡散に関わったことが判明したあと、パキスタンの開発計画は打撃を受け、後退するだろうというのは噂にすぎない。地域的文脈からみて、それはあり得ない。インドが核を持ち、核兵器を持っているのだから、パキスタンだけが核開発計画から手を引くということはありえない。

・Asia Times……もっと良い戦略はないのでしょうか? カーン博士を国民の前で辱めることは賢明だったのでしょうか?

・ベーグ……もっと親切にやってもよかった。しかし、しょうがなかったのだ。カーンが関わっていたことは事実なのだから。

smellWhy the general begs to differ
By Syed Saleem Shahzad、KARACHI


■アフガン軍、カブール刑務所に突入[041217 AP]

アフガン軍は金曜日にカブール刑務所に突入し、銃撃戦とロケット砲により、10時間にわたってろう城していたアルカイダ容疑者を殺害した。中にいた4人のアルカイダ容疑者が脱出しようとした際に銃撃戦が開始され、4人の容疑者と看守4人が死亡した。

パキスタン3人とイラク人1人の4人の囚人が、朝の祈りに連れ出そうとした看守を剃刀で襲い、AK-47を奪い、刺し殺したという。その後銃撃戦の結果、看守3人と容疑者2人が殺害された。残った2人のパキスタン人は別の銃を奪い、刑務所の2階にろう城した。2人は10時間立てこもり、警備官たちに発砲。夕方になってやっとアフガン軍に殺害されたという。

この刑務所には、テロリストの捜索と称してアフガン人を拷問した罪で、8〜10年の刑を宣告されたアメリカ人3人も服役している。

hoonAfghan Troops Storm Jail, Ending Standoff
By PAUL ALEXANDER


■両マフスード族、外国人を匿わないことを約束[041217 Daily Times]

木曜日に開催された2つのマフスード枝族のジルガで、外国人を匿わないという同意が軍との間で交わされた。

Shabikhel族とShimankhel族の部族民たちが、別々にSafdar Hussain中将と話し合ったという。軍側の説明によると、今回の合意の結果、両部族の居住地に隠れていると疑われている武装戦闘員アブドゥッラー・マフスードの捜索は、大きく前進するという。

中将によると、ワジール族と同様の開発計画をマフスード族の居住地に計画しているという。しかし開発を開始する前に、まずは安全を確保しなければならないと語った。

hoon2 Mehsud tribes promise not to shelter foreigners
By Iqbal Khattak、PESHAWAR


■ビンラディン生存、オーディオテープを発信[041216 Reuters]

ビンラディンのものと思われるオーディオ・テープがインターネットに配信され、12月6日にサウジアラビアで起きた事件を称賛した。

録音でビンラディンは、ジェッダのアメリカ領事館を襲撃したサウジのアルカイダ武装戦士たちを称賛した。ジェッダの事件では4人の戦闘員が殺害され、5人目が逮捕されている。

テープの中で、サウジの支配者たちを「腐敗したシオニスト」と批判し、アメリカの手先で、やっていることは「ムスリムに対する十字軍の延長」と非難した。(後略)

ohBin Laden Alive, Releases Audio Tape
DUBAI


■パキスタンの裁判所、反逆罪でジャーナリストの再逮捕を命令[041215 AP]

パキスタンの裁判所は、偽タリバンビデオを作ることに協力したジャーナリストの保釈を取り消し、再び逮捕命令を出した。

クエッタの対テロ裁判所は火曜日に、ジャーナリストのKhawar Mehdi Rizvが裁判の傍聴に出席しなかったために、再逮捕を命じた。「もう3回も裁判に出席していない」と副裁判官が述べ、保釈を取り消したという。

パキスタン人のRizviは、去年の12月にフランス人ジャーナリスト2人とともに逮捕されたのち、保釈されていた。フランス人2人はビザ無しでバローチスタンに行った罪で6ヵ月の刑を下されていたが、後に釈放され、帰国した。

Rizviは、フランス人たちに協力して、タリバン戦士たちが訓練をしている様子をビデオに撮ろうとしていたとして、反逆罪で告訴された。タリバンだという戦士たちは、実は単なる部族民で、タリバンに扮していただけだったという。

hoonPakistani court orders re-arrest of journalist charged with treason


■トルコ人技師の遺体、発見さる[041215 AP]

誘拐されたトルコ人技師の遺体が、アフガニスタン東部で水曜日に発見された。運転手と通訳とともに誘拐された翌日である。

火曜日にトルコ人技師Mohammad Eyupが誘拐された。今年になってトルコ人技師が殺害されたのは、2度目である。大掛かりな捜査活動を開始した治安部隊が、遺体を発見した。

クナール州警察長のMateullha Sofieによると、警察が動き出したために、殺害して遺体を放置したようだという。銃で撃たれていた。

同時に誘拐された運転手と通訳は、夜明け前に、無事解放された。誘拐犯たちは、近くの検問所に待機していた警察官と銃撃を交わし、警察官1人が負傷した。

garrBody of Turk Engineer Found in Afghanistan
By PAUL ALEXANDER、KABUL


■アルカイダ容疑者6人、ペシャワルで逮捕[041215 Daily Times]

火曜日、Army Stadium地域でアルカイダ容疑者6人が逮捕された。治安部隊が取り締まりを実施したときに、6人は会合の最中だった。

hoonSix Qaeda suspects held in PeshawarPESHAWAR


■アフガン大臣、援助団体を批判後辞任[041214 Paktribune]

外国の援助団体は、高価な車や家に金を費やして浪費していると非難した計画大臣が、辞任した。

計画大臣のRamazan Bashardostは、カルザイが外国の援助団体の活動を停止させることを拒否したあと、辞任した。カルザイ政府のメンバーたちは、汚職の噂があるにもかかわらず、ドナー国に対してさらなる援助を要求している。しかし最近Bashardostは、援助団体が十数億ドルを着服していると、非難していた。

カルザイは計画大臣の発言とは距離を置き、援助団体が浪費しているという噂により、武装勢力たちの攻撃を助長していると述べた。

smellAfghan Minister quits after criticizing relief groups
KABUL


■アフガニスタン東部で3人誘拐[041214 AP]

トルコ人技師とアフガン人2人が火曜日に、アフガニスタン東部で誘拐された。3人はジャララバードから、クナール州のChawki地方の現場に向かう途中で誘拐されたようで、空の車が途中の道路上で発見されたという。

誘拐されたのはトルコ人のMohammad Ayubとその通訳と運転手である。

garrThree Kidnapped in Eastern Afghanistan KABUL


■オマール師の腹心、「拘束」[041214 BBC]

アフガン治安部隊が、タリバンのリーダーのオマール師の前治安部責任者を逮捕したと、高官が発表した。

Mullah Naqibullah Toorと別のタリバンが月曜日に、カンダハルで逮捕された。州政府知事のハリッド・パシュトゥンがこれを確認した。男たちの所持品から、オマール師の居場所がわかるのではないかと、期待されている。

タリバン・ウォッチャーの『BBC』のラヒムッラー・ユースフザイは、政府の声明とは裏腹に、2人が重要な幹部かどうかははっきりしないと述べた。いっぽうタリバンの報道官は、2人が逮捕されたことを否定した。

密告により逮捕されたMullah Naqibullah Toorは、武器を所持していなかったと、カンダハルの高官は述べた。2人はカンダハルで起きたすべてのテロ活動に参加していたと述べ、その逮捕は非常に重要だという。

高官によると、Mullah Naqibullah Toorは別の男、Mullah Qayyum Angarとともに逮捕された。米軍は、これらのことに関して情報はないと述べた。

hoonMullah Omar security chief 'held'


■ビンラディンの捜索、手ごわい地形が阻む[041213 New York Times]

2003年にビンラディンの捜索のために、CIAはパキスタン北西の国境地帯の山中数ヵ所に、小さな捜索基地を作った。しかしCIA高官たちはパキスタン高官に厳重に監視されて捜索を制限され、部族地帯を移動するときには、必ずエスコートがつけられた。その結果アメリカ人たちは、諜報情報を収集することができないと、ある高官が匿名で語った。(中略)

9.11以後、アルカイダは大きな打撃を受けた。しかしビンラディンは、単なるイスラーム過激派の象徴ではないと、あるアメリカ諜報部員は語る。国境のパキスタン側で、彼はエリート・テロリストをコントロールしており、アメリカを攻撃する計画を着々と進めているという。(中略)

アメリカの対テロアナリストによると、このアルカイダの特殊部隊は各国に散らばっているという。この「外にある計画組織」は必要があれば、世界中の地域司令官と連絡をとることができると、ある諜報部高官は述べる。「アメリカ大陸を攻撃するという、ビンラディンの強い要望がある。外部にあるこの計画組織に、これを実行させようとしている」。アメリカは、このグループに浸透できないでいる。そして今、彼らへの対処の方策は、行き詰まっている。

アナリストたちは、ビンラディンはパキスタンの部族民や外国人戦闘員に保護されていると確信している。これらのグループが、ビンラディンと組織の幹部との連絡係を勤めている。「ビンラディンは部族民たちに助けられている。まだ外部と連絡をとっている」とある諜報部員は語る。

ビンラディンが隠れていると疑われているヒンドゥークシュの山奥は、世界から隔絶されている地域だ。(中略)

パキスタンは、国内にアメリカの軍隊や諜報部員が入ることを許していない。そのために、タリバンやアルカイダ戦士たちはアフガニスタンの米軍基地を攻撃しては、再びパキスタンに戻っていく。米軍兵士たちは、パキスタン側から外国人武装戦闘員が発砲してきているのに、パキスタンの国境警備隊たちは、ただ座って見ていたと訴える。

《捜索は行き詰まりか?》

行動を限定されているために、アフガニスタンにいる米軍や諜報部員たちは、ビンラディンの捜索を投げ出したと、ある諜報官は述べた。アフガニスタンの新政府に秩序をもたらす傍ら、地元のタリバン兵士やアルカイダ戦闘員たちを一掃することに専念している。土曜日に米軍はアフガニスタンで、新たな作戦を開始した。

アメリカはパキスタン上空を監視しているが、それでも規制されている。無人偵察機はパキスタン上空を飛ぶことは許されているが、パキスタンの軍事指令部の許可を得てから行動できることになっているために、しばしば手遅れになってしまうとCIA高官は述べた。

国境地帯の電子偵察機も思う通りには働かないと、アメリカの諜報部員は訴える。ビンラディンは監視される電子機器を避け、信頼できる人間を通じて連絡をとっているとみられている。携帯電話の中継器がない国境地帯では、衛星電話や無線が用いられる。麻薬密売人たちはこの方法で連絡を取り合っているために、同じ機器を用いるアルカイダ工作員を識別をすることは難しい。

さらに諜報情報を収集するためにCIAは2003年の終盤に、国境地帯に小さな基地をいくつも設営した。しかし対テロ作戦の防止にはなっていないと、諜報部員は語る。CIAの臨時職員はパキスタン軍司令官に頼り、パキスタン人たちのCIAに対する態度は、人によって差があるという。パキスタン国内では「我々の行動はかなり限定されている」と、あるアメリカ人諜報部員はいらだちをみせた。CIAの報道官は、これらの基地について言及することは避けた。

パキスタン人高官によると、アメリカ人は人目につきやすく、単独で行動することはあり得ないだろうと述べる。アメリカ人たちが誘拐されたり殺害されないように、また姿を見られないように最大限エスコートされているという。そのようなことがあったら、パキスタン政府にとって非常に不利になるからだ。

基地の設営を承認したことは、ムシャラフにとってはアメリカに協力するという、重要なステップだったと、諜報部高官は語る。アメリカと協力することと、長い間放置してきた部族地帯で過激派が育っていることを、秤にかけているのだ。政府高官は、パキスタン各地の過激派たちが、部族地帯に終結して戦っているらしい。

《腰の重い仲間》

アメリカはパキスタンに、アルカイダの捜索に協力するよう圧力をかけているが、パキスタン軍による軍事作戦は、ムシャラフの暗殺犯が部族地帯と関係があることが明るみに出た後、やっと開始された。それまでパキスタンは、外国人戦闘員たちは国内にはいないと主張していた。

結局、軍は南ワジリスタンに2万5000人の兵士を派遣し、テロ訓練所を数ヵ所発見。パキスタン人司令官によると、戦闘員246人を殺害し、579人を逮捕したという。しかし大きな犠牲も払った。パキスタン兵200人が死亡、住民によると、一般市民数百人が死亡した。

たとえば9月9日、南ワジリスタンのデーラで作戦が実施され、住民80人が死亡した。この作戦で家族を殺害されたマフスード族の若者たちが、軍に反発するようになる。「あれで流れが変わった」と、パキスタン人ジャーナリストのラヒームラン・ユースフザイが語る。「友人、親戚などが殺されたのだ」。

確かな数字はわからない。しかしパキスタン人高官は、500〜1000人の部族民たちが、150〜300人の外国人戦闘員とともに戦っていると述べる。その大多数がウズベク人である。パキスタン人アナリストによると、部族地帯の構造が崩壊しているという。富に目がくらみ、無職の若者たちは武器を取っているのだと、ユースフザイ氏は語る。「若者たちは長老や家族の言葉に耳を傾けなくなり始めた」。

住民たちは、軍と武装勢力の板挟みになっている。あるワナ出身の56歳の教師によると、アメリカ人やパキスタン政府は1980年時代、対ソヴィエトのジハードで戦闘員たちを支持して以来、部族地帯に関心を示さなかったという。ビンラディンがこの地域にいるかどうかと訪ねると、「アメリカがこの地域にビンラディンを連れ来てたのだ」と答えた。「かれらのほうが、私よりビンラディンの居場所については詳しいはずだ」。

パキスタン政府は住民たちの信頼を勝ち取るために、学校を建設したり井戸や道路を作っているが、パキスタンやアメリカの捜査官たちと協力することは、部族民にとっては“napak kam”、つまり裏切りととらえられている。

武装勢力たちは部族民のほかに、パキスタンのISIからも援助されている。ISIはタリバンの影の力だった。ISIのメンバーの何人かは、アルカイダの逮捕を阻止しているともいわれる。

パキスタン人高官は、アメリカが持つ猜疑心が、アメリカの存在を危うくしていると警告する。アフガニスタンやイラクにアメリカが侵攻して以来、パキスタン人たちは次にイランが狙われると観ている。そして、その次がパキスタンだ。

あるパキスタン人治安部高官によると、もし米軍がパキスタン国内に入ったら、全土で反対運動が起こるだろうという。「米軍がパキスタンの領土に一歩でも入ったとき、政府は『なぜアメリカに対する政策を変えないのか』という人々の声を阻止するこはできなくなる」。「今でも、『アメリカに協力しすぎている』といわれているのに」。

アメリカの諜報部員によると、イラク戦争のおかげでアルカイダには、新たなメンバーが増えたという。イラク戦争のために、CIAなどの臨時職員や無人偵察機が、アフガニスタンからイラクに移された。イラク戦争のおかげでアメリカの標的が分散し、アルカイダの再結成を許してしまったという。パキスタンは、アメリカのアフガニスタン侵攻以来、アルカイダの隠れ家だった。2001年にタリバンが崩壊したあと、アルカイダ幹部の何人かはイランに移動したが、多くはパキスタンに入ったのだ。2002年の春までに、南ワジリスタンは「世界で活動するアルカイダの巣窟」になった。地元の人間がアルカイダを匿った。

そして、すぐに安全なシステムが確立される。無線や衛星電話を利用した部族民のネットワークが見張り番となり、ワナから軍の車両が1台以上発車するやいなや、伝令が飛ぶ。「いつでも警告されてしまう」とパキスタン人高官は語る。

外国人戦闘員たちは現金をたくさん持ち、連絡を取り合うときには、洗練された暗号を用いる。夜間、小グループで行動し、統率がとれ、ラップトップコンピュータを用いる。組織は部族地帯で戦うパキスタン人兵士たちにEメールや手紙、DVDを送り、ムスリムの仲間をアメリカのために殺さないように警告していると、ある欧米外交官が述べた。

《選挙前の警告》

CIAはパキスタンの国境地帯から、ビンラディンの情報を断続的に入手するが、いつも行動するには手遅れになってしまうと、ある高官が述べた。トラボラ以来、「この地域にはいないという、確実な情報はない」。

アメリカのアナリストたちは、ザワヒリも国境地帯にいると見るが、ビンラディンには同行していないといわれる。2人は安全のために、別れたのだ。最近は2人とも個別にオーディオ・テープやビデオを発信しているのも、このためだろうと見られる。

ブッシュの大統領選挙の数日前、ビンラディンはアメリカを警告するビデオを発信した。映像に写ったビンラディンは、元気そうだった。肝臓が悪いといわれているが、彼の健康状態についてはわからない。

パキスタンの国境地帯での活動は十分とはいえないが、ブッシュはムシャラフを称賛する。ムシャラフを擁護するためにアメリカは、ビンラディンはパキスタンとアフガニスタンの国境地帯にいると述べて居場所をあいまいにして、イスラマバードに圧力をかけないようにしている。

アメリカの対テロ高官は、パキスタンの治安部隊はパキスタンの都市部でアルカイダを逮捕しているが、部族地帯かちは誰も逮捕されていないと訴える。最近の作戦では、南ワジリスタンの低地部にいた外国人戦闘員たちを、山岳部や森林部に追いやり、他の部族地帯や都市部から遠ざけることができた。「動きが生じ、今後彼らを探し出し、狙うことができるだろう」とあるアメリカ人は述べた。

《「成功」は疑わしい》

11月の終わりに、パキスタン政府は南ワジリスタンの作戦を「成功」と称賛した。ビンラディンはこの地域にはいないという。ムシャラフ大統領もブッシュに、国内のアルカイダの「背骨を折った」と述べ、訓練基地を取り払ったという。

しかし、アメリカ人諜報官は懐疑的だ。パキスタン人はたびたび事前に部族民を警告し、歩兵を捕まえたにすぎない。アルカイダの一掃やビンラディンの逮捕は、アメリカとパキスタンがもっと協力しなければ実現しないと、両国の諜報部員は語る。アメリカは部族地帯に道路や井戸、学校を建設するために、450万ドルを費やしている。イラクに150億ドル費やしていることを考えれば、わずかな額だ。パキスタン人高官たちは、部族地帯の安全を確保するためには、経済開発しかないと語る。「武装勢力を一掃するためには、もっと努力をしなければならない。彼らはいまだに大きな力を持つ」と、イスラマバードの経済アナリストが語った。

garrA Hostile Land Foils the Quest for bin Laden By JAMES RISEN and DAVID ROHDE


■パキスタン、ビンラディンはいないと反論[041213 AP]

パキスタンは月曜日に、ビンラディンはパキスタン国内には隠れていないと述べ、CIAが部族地帯に基地を作ることを許したという報道を否定した。

外務省報道官のMasood Khanは、ビンラディンを最近目撃した者は誰もいないと述べ、彼がチトラルに隠れているかもしれないという報道を否定した。「ビンラディンがチトラルをはじめ、パキスタンで目撃されたという情報はない」。「パキスタン国内で米軍が参加為ている作戦はない」と述べた。

以前ムシャラフ大統領は、アメリカ人専門家数人がパキスタン軍とともに、アルカイダに対する作戦に参加していると述べた。しかしアフガニスタンにいる米軍が、パキスタン国内でビンラディンを捜索しているという事実はないと、否定している。

月曜日の『New York Times』の記事によると、CIAは2003年に国境付近に小さな基地を作ったという。「パキスタン国内に、部族地帯に、CIAの基地はない。記事は真実ではない」と軍報道官のShaukat Sultan准将が語った。

パキスタンの対テロ高官が月曜日に、アメリカ人高官はビンラディンの行方をつかんでいないと述べた。「アメリカの諜報部や通信の専門家が特定の情報を持ってくると、彼らは我々に協力を要請する。我々が物事を組織立て、彼らの情報に基づいて作戦を計画し、自分たちの治安部隊を用いて作戦を実施する」という。

パキスタンのISI高官は、武装勢力たちがアルカイダ工作員から援助されているという報道を否定した。(後略)

smellPakistan Turns Up No Signs of Bin Laden
By MUNIR AHMAD、ISLAMABAD


Sniffed Out By Trail Dog 0-1, 2003, 2004.