【2004年12月20日〜12月26日】


■核の秘密が露見するとともに、容疑者が増える[041226 New York Times]

アメリカの専門家と国際原子力委員会I.A.E.A.が、リビアの兵器計画のファイルから10キロトンの原子力爆弾の設計図を見つけたとき、カーン博士が率いる核秘密ネットワークの大胆さを思い知らされることになった。諜報関係者たちは数年間カーン博士の動向を監視し、核弾頭の燃料を作るためのウラン濃縮機製造機械を密輸していると見ていた。しかし発見された設計図は、新たな危険性を示唆していた。リビア人たちによれば、核作りの道具1億ドル分を買ったおまけだったというのだから、なおさらだ。

「実際に使える爆弾の設計図のコピーを見たのは初めてだ」と、あるアメリカ人専門家が述べる。「そして重要な問題は、誰が他にこれを持っているか? イラン人か、シリア人か、アルカイダか?」。

しかしこの脅威の発見のあと、さらにいくつもの疑問点が浮上した。

アメリカとI.A.E.A.の専門家は、これらの設計図をいかにコントロールするべきか、論争をはじめた。結局ワシントンのEnergy Departmentの金庫に保管することになった。

《予兆》

カーン博士の逮捕の約1年後、彼の核闇市場の秘密が少しずつ明らかになった。しかし捜査は、ブッシュ政権とI.A.E.Aとの間の亀裂のため、またワシントンが、パキスタンの英雄に圧力をかけることで、大事な同盟国との関係が悪くなることを恐れたために、はかどらなかった。したがってカーンとその一味の活動の全体像は、いまたに明らかになっていない。

怪しい点はいくつもある。カーンが逮捕される以前に訪れた国がどこだったか、捜索はいまでも続いている。捜査官によるとカーンは、ウラニウムのような材料を購入するため、あるいは原子力関係のものを売るために、シリア、サウジ、エジプトなどを含む18カ国を訪れたという。30年近くカーンを監視していたアメリカの諜報部にとっては、これは決して新しいニュースではなかったが、彼がイランや北朝鮮に致命的な密輸をしたことは見落としてしまったのだ。

ブッシュはカーンのネットワークは機能しなくなったと豪語するが、しかしその一部はまだ機能しているという証拠がある。国連原子力委員会とアメリカとの間の協力は、壁にぶちあたった。ブッシュ政権は、I.A.E.A会長のエルバラダイを更迭しようとさえしている。

《武器商人》 (省略)

《危機》

(中略)1970年代、オランダで仕事をしていたカーンを、オランダの諜報部員たちは監視していた。1975年、彼がスイスの核見本市で怪しげな質問をしていたために、カーンはウラン濃縮機部門と離れた部所に、移動になった。Dutch Campaign against Arms TradeのFrank Slijperは、「カーンは危険人物であることがわかっていた」と述べる。

12月になると、カーンは急にパキスタン政府に呼び戻される。数年後、カーンが遠心分離器の設計図を盗んだことが判明する。パキスタンはインドに対抗するために爆弾作りに専念し、ワシントンはそれを阻止しようとしていた。

アメリカ諜報部は、パキスタンはプルトニウムから原子爆弾を作ろうとしていると見ていた。そのためにアメリカは、プルトニウム燃料の再処理プラントを完成するためのテクノロジーが、フランスからパキスタンに輸送されるのを阻止した。しかしカーンは、別のテクノロジーを盗んでいたのだった。

カーンはそれ以後何度もオランダを訪れていたが、アメリカは彼を監視を続けるために泳がせた。オランダ当局がカーンを逮捕しようとしたときに、CIAはそれを阻止さえしたのだ。

《中国コネクション》

カーンはその後、北京を訪れる。1980年代初頭にカーンは、1966年に中国が開発した兵器の設計図を入手した。これはミサイルに装着できる、コンバクトな形のものであったため、重要だった。

アメリカの諜報部は、イスラマバードの仕立屋の名前がついた2つの大きなビニール袋をリビアが提出したために、はじめてカーン研究所との取引に気づくことになる。このビニール袋の中には、ロケットの大きさにぴったり合う設計図が、100以上入っていた。

さらに欄外には、手書きのメモがあった。「中国の大臣が言及されていて、彼らが取引に関わっていたことを示していた」という。またカーンのライバルであるMunir Khanを差す“Munir”という名前もあった。MunirはPakistan Atomic Energy Commissionを率いる、カーンのライバルである。パキスタンのミサイルには小さな武器しか装着できなかったために、その大きさが重要だった。欄外には、「Munirの爆弾はもっと大きい」と記されたメモもあった。諜報専門家は、カーンは遠心分離器のテクノロジーと引き換えに、爆弾の設計図を入手したとみる。(中略)

《勝利と謎》

(中略)カーン博士が沈黙しているために、リビア以外のどの国が爆弾の設計図を受け取ったのか、わかっていない。諜報の専門家によると、イランと北朝鮮は可能性があるが、それ以外は設計図を入手した証拠はないという。しかしこれも諜報情報の欠如のために、暗礁にのりあげた。

カーンは北朝鮮との関係について、沈黙している。アメリカは、北朝鮮は2種類の兵器計画を持っているとみている。そのうちのひとつは、カーンのテクノロジーを使っているとみられるために、カーンの沈黙は致命的だ。

「アメリカ政府がパキスタンに核の拡散を許してしまったことは、信じられない」と、クリントン大統領時代に北朝鮮の特使だったJack Pritchardは語る。「ムシャラフ政府がテロとの戦いに協力しているために、許してしまった。しかし今となっては、ビンラディンの捜索もうまくいっていない。そしてカーンからは、何もわからないとくる」。

《欠落部分》

リビアが作った核装置を調べたところ、遠心分離器とルーターがないことがわかった。今日まで、これらの部分がどこから入手されるはずだったか、わかっていない。リビアが、自分たちで作ろうとしていたともいわれる。まだ判明されていない国から輸送されていた、と考える者もいる。そしてボスはいなくなったが、まだ組織は機能していると。

(中略)一部では、組織の顧客にはシリア、エジプト、サウジ、スーダン、マレーシア、インドネシア、アルジェリア、クエート、ミャンマー、アブ・ダビがあるといわれる。

ことの重大性を考慮すれば、ブッシュ政権とI.A.E.A.が協力するのは当然とみられていたが、ヨーロッバの外交官たちは、ブッシュ政権はすべての情報を流していないと訴える。「彼らは情報の共有を望んでいないのだ」。

連邦政府側によれば、I.A.E.A.から秘密が漏えいする恐れがあるために、機密情報は与えられないという。I.A.E.A.には137国参加しているが、なかには核の秘密を探ろうとして工作員を派遣している可能性もあるという。「警察と泥棒がそろって協力している」という。 (後略)

smellAs Nuclear Secrets Emerge, More Are Suspected By WILLIAM J. BROAD and DAVID E. SANGER


■パキスタン北西部の援助団体で2人殺害される[041226 AP]

覆面をした男たちがチトラルの援助団体の事務所を襲撃し、2人の職員を殺害、車両5台に火を放って逃走した。

土曜日遅くに、アガ・ハーン基金の事務所で発砲事件があった。覆面をした4人の男がライフルを乱射し、警備員と運転手を殺害した。さらに駐車していたピックアップ5台を放火した。

チトラルはアフガニスタンとの国境付近の町で、ビンラディンが隠れていることを、パキスタン高官はこれまで否定してきている。

hoonTwo people killed in attack on aid group office in northwestern
Pakistan


■カルザイのライバル、新政党設立[041226 BBC]

カルザイのライバルだったっ前教育大臣だったカヌーニ氏が、New Afghanistanと名付けた新党を立ち上げ、4月の国会選挙に参加すると述べた。

カヌーニはカルザイから国防大臣になることを打診されたが、新たな政党を立ち上げるために、申し出を断わったという。

hoonTop Karzai rival plans new party


■マフスード、恩赦を申し出たことを否定[041225 Daily Times]

南ワジリスタンの武装兵士のリーダーBaitullah Mehsudは、恩赦を受け入れる申し出をしたという政府の声明を否定したと、『BBC』が金曜日に報道した。

BBCとの電話インタビューでBaitullah Mehsudは、政府に恩赦を受け入れる申し出はしていないと述べた。しかし部族民を通して、政府と交渉は続けているという。彼のいる地域ではいまだに銃撃戦や爆撃が行なわれ、破壊が続いているという。「それなのに、なんで謝罪する必要があるのか」と、述べた。

部族のリーダーは『BBC』に、パキスタン陸軍と戦えばインドや北部同盟を助けることになるため、本望ではないという。「政府の恩赦の申し出を受け入れて、自分のジハードを侮辱しない」と述べたという。

hoonMehsud denies seeking amnesty
LAHORE


■南ワジリスタンで外国人6人逮捕[041225 News]

6人のパシュトゥを話す外国人、おそらくアフガン人が、南ワジリスタンのマキン地方で逮捕された。部族民の情報源によると、別の2人は逃走したという。

パキスタン軍と準軍隊が、8人が涸れ沢を歩いているところを逮捕しようとした。逮捕された6人は、ビスケットやケーキ、ナツメヤシを持っていたという。この地域に隠れている外国人に、食料を調達しようとしていたのではないかと見られている。

hoonSix foreigners arrested in S Waziristan
By Sailab Mahsud、TANK


■バスポートと宗教の政治問題[041224 BBC]

(前略)パキスタン政府は、機械読み取り可能のパスポートを今年になって発行し始めた。新たなパスポートのフォーマットはInternational Civil Aviation Organisation(ICAO) の書式にのっとったものである。

パスポートがこれまでと違う唯一の点は、所持者の宗教を記載しないことだ。パスポートにおける宗教の記載は、1980年にハク大統領の時代に導入された。

《アイデンティティに対する挑戦》

このパスポートの変更に対して、MMAが強行に反対した。ジア(ウル・ハク)将軍の支持者たちは、世間の目から宗教を除外することを許さないようだ。「宗教欄の除外は、ムスリムのアイデンティティに対する攻撃と感じる」と、MMAのリーダーのMaulana Fazlur Rehmanが発言。宗教欄の復活を要求した。

数週間後、この要求はAftab Sherpao内相によって却下された。政府は宗教欄を復活させる意思はないと明言したのだ。

したがって今週になって、PMLを率いるChaudhry Shujaat Hussain前首相が、政党としてはパスポートに宗教欄を復活させることを望むと発言したことは、驚きをもって迎えられた。Hussainの発言は国民を驚かせ、政治オブザーバーたちは、今になってなぜ前首相が「啓蒙された現代化」を提唱するムシャラフと、袂を分かつ発言をするのか、首をかしげた。

《ばかばかしい》

あるオブザーバーによると、「論争全体、宗教問題と関係ない」という。「MMAの論争のちぐはぐさからも、明らかだ」。MMAは、宗教欄の排除により、1974年にパキスタンの憲法で非ムスリムと宣言された少数派のQadianisが、メッカに巡礼に行くことを可能にしてしまうというのだ。

「ばかばかしい」と、カラチのバスポート事務所の幹部が延べる。「パキスタンにあるサウジの機関は、すべてのパスポート所持者の宗教データベースにアクセスすることができる。いずれにしても、反対しているのはサウジではないのだ」。

オブザーバーたちは、この問題は宗教の問題というよりは、ムシャラフの政治構造の危うさの問題だという。先月政府がベナジール・ブット前首相の夫を釈放して和解に向けて歩み出そうとしたことで、PMLのリーダーシップが崩れ始めたのだとみる。その1つの結果がHussain氏の発言で、誰がリーダーシップをとっているのか、暗にほのめかそうとしたのだという。

「彼は政府内に席は持たないが、首相さえもが支持していない決議を採決できる権力を持つことを誇示したのだ」という。宗教の正当性を、地元の政治的強制力から引きだそうとする常とう手段のようだ。

パキスタンのイスラーム化を目標とするジア将軍の戦力の本質は、宗教の象徴主義だった。彼の死後16年たった今も、彼の伝統を支持する者たちは、すべての面において、宗教が世間の目から失われることを決して許さないのである。

機械読み取り可能のパスポート論争が続くなか、政府は前回の却下にもかかわらず、宗教の記載を復活させる方向で動く気配だ。そうしたら世界は再びパキスタンを原理主義的国家ととらえ、現代世界に追いつくことができない国と見るだろう。海外のオブザーバーたちの中には、このような原理主義は、弱い政府の政治的締めつけの結果起こるのではなく、敬虔な宗教心を取り違えているととらえる者はほとんどいないだろう。

smellPassports and religion in political mix
By Aamer Ahmed Khan


■ムシャラフ暗殺犯に死刑を宣告[041224 AP]

軍裁判所は、去年発生したムシャラフ暗殺未遂事件にかかわったとして逮捕された2人の兵士のうち、1人に死刑を、もう1人に終身刑を言い渡した。

軍報道官のShaukat Sultan少将によると、2人とも陸軍下士官であるというが、名前や暗殺事件において、どのような役割を果たしていたかについては触れなかった。死刑が宣告された時期についても、ある諜報情報源が数週間前と述べただけで、詳しいことはわからない。

リビア人のアルカイダ工作員が、ムシャラフに対する2件の暗殺未遂事件を首謀したといわれている。この事件で陸軍と空軍関係者数人が逮捕され、今後、同じような裁判が行なわれるという。空軍の幹部官僚は、この件についてコメントを避けた。

ある諜報部高官によると、10人ほどの軍関係者が逮捕され、これから裁判を受けることになっているという。(後略)

hoonMan Sentenced to Death in Musharraf Plot
By MUNIR AHMAD、ISLAMABAD


■マフスードの投降、拒否される[041224 Nations]

ある政府高官が木曜日に、政府はアブドゥッラー・マフスードの投降の申し出を拒否したと語った。部族地帯の治安責任者Mehmood Shahは、マフスードは投降のために、条件をつけてきたという。「無条件で投降しないかぎり、申し出を受け入れない」とMehmood Shahは述べた。

マフスードは、武器を捨てる条件として、彼の過去の行ないを水に流すことを要求しているという。政府は、このようなことは受け入れがたいと述べた。

マフスードと一緒に投降を申し出ている別の戦闘員、Baitullah Mahsudに関しては、投降を受け入れるという。

hoonMahsud's surrender offer rejected
PESHAWAR


■ムシャラフの厄日[041223 Daily Times]

PML政府は火曜日に、PPPのAsif Ali Zardariをイスラマバード空港で逮捕した。(中略)空港で警察官がPPP党員に暴力を与えているシーンが、世界中に報道され、ムシャラフの名前が汚された。

この事件は、ムシャラフはPPPと協力しているかのような声明を発表した2日後に発生した。またベナジール・ブット女史と協力して、原理主義政党の「過激主義」に対処するかのような動きがあった直後だ。1日前にMMAのリーダーMaulana Fazlur Rehmanが、Zardari氏がムシャラフに接近していることを、公的に非難した。いよいよムシャラフがPPPと和解すると噂されるなかで、ブット女史自身はPMLNと距離を置いた。夫の再逮捕のあとテレビ番組に出演し、PMLNはMMAと協力体勢にあるが、自分たちはMMAとは距離があると語った。

Zardari氏のイスラマバード空港到着は何事もなく終わるはずだったが、行政側はこの機を政治的な転換期にすることにしたようだ。ムシャラフの政策に打撃が与えられることは確かだ。1週間前に政府はMMAに、反ムシャラフのキャンペーンを実施することを許可した。聖職者たちがムシャラフの内外政策を非難し、制服を脱ぐよう、大々的に非難した。大統領やPMLは、これに対してどう反応したか?

ムシャラフが予告しているすべての政策を否定している聖職者の力の増大に、大統領は明らかに不満を感じたようだ。ムシャラフは、「髭」が国家を威圧することは許さないと、鼻息を荒くして誓った。新聞社の論説によれば、これはMMAに対する最も攻撃的な発言であり、彼の勇気ある行動の裏には、何らかの不安の兆しを感じると論じた。さらにムシャラフは内務相のAftab Sherpaoを促し、導入予定の機械読み取り対応のパスポートの記載内容に、宗教の明示を加えることには変更はないと発言させた。この新たな挑戦に関して、PMLは彼を支持したのだろうか? そんなことはない。宗教大臣Ijazul Haqは、パスポートの宗教欄は復活しなければならないと述べた。ジア将軍の息子が、自分のためにこのような発言をしたのだと思ってはならない。PMLの責任者Chaudhry Shujaat Hussainも、Ijazul Haqを擁護したのだ。全世界が最近わかってきたように、これもまた大統領の約束の後退のひとつなのだ。

ムシャラフは、政治戦略の問題になると宗教や宗教政党の背後に反射的に身をかわす、2枚舌の政党にいる。再び歴史は繰り返すのだ。PPPとMMAの間には大きな溝があるために、野党は統一されない。しかしPMLと宗教者たちの間には、それほど大きな隔たりはない。ということは、誰が邪魔者なのか? 答えは簡単だ。ムシャラフ自身が邪魔者なのだ。火曜日の不幸な事件にもかかわらず、ムシャラフがアジズ首相に国家的な和解策を打診するよう申し付けた事実は、唯一良い知らせだ。

hoonEDITORIAL: A bad day for Musharraf


■アフガン大統領、新官僚を任命[041223 AP]

カルザイ大統領は木曜日に新たな内閣官僚を任命し、著名な国防大臣を排除するとともに、重要な任務から軍閥たちを一掃した。

カルザイはこれまで無名だったHabibullah Qaderiを、新たに設立された対麻薬省に任命した。また国防大臣だったタジーク族の軍閥で、北部同盟のリーダーだったファヒームを除外し、副防衛大臣だったAbdul Rahim Wardakを新大臣に任命した。Wardakはパシュトゥン族である

欧米では評判のよい外務大臣のアブドゥッラーと内務大臣ジャラリは、現職を保つ。さらにヘラート知事のイスマイル・ハーンは水利・エネルギー大臣に任命された。(後略)

hoonAfghan President Names New Cabinet
By PAUL HAVEN、KABUL


■ブットの夫、釈放[041222 Reuters]

裁判に出頭しなかったという理由で拘束されていたベナジールブット前首相の夫は、1日後に釈放された。スィンド州最高裁判所は水曜日に、30万ルピーの保釈金で保釈を命じた。

11月のZardariの保釈で、ブット前首相のPakistan Peoples Partyとムシャラフ政権との間に和解が成立することが期待されていた。アナリストによると、Zardariの今回再逮捕は、軍事政権の一部の人間が、両政党が和解することで、軍が影響力を失うことを恐れたために組織したとみる。「地元の野望と地元の政策が絡み、ムシャラフが命じたのではないようだ」と、新聞編集者で政治コメンテイターのNajam Sethiが語った。

smellBhutto's husband freed
By Imtiaz Shah and Faisal Aziz、KARACHI


■パキスタンのジハードの伝統を一掃する[041222 Asia Times]

パキスタン陸軍内のイスラーム原理主義者派とリベラル派との間の駆け引きが、加熱し始めた。パキスタン史上初めて、陸軍はかなり大胆な戦術をとり、その内部抗争を解決しようとしていると、ある情報源が語った。そのなかには、死刑も含まれている。

1980年代、インドに対する「難解な戦術」を維持するために、パキスタン軍はジハード団の構造を再構築して、南アジアにおけるパキスタンの政治的支配権を確立することを前提に、中央アジアとアフガニスタンに影響力を与えようと試みた。しかし9.11以後、アメリカの圧力のもとに、パキスタンは政策を変え、方向転換をした。これまで陸軍は、国内で唯一、統一された組織だったにもかかわらず、この方向転換のために、軍内にさまざまな亀裂が生じた。過去数年間にもいくつかの問題が明るみに出ているが、最近『Asia Times』は、陸軍内に新たな変化が生じていることをつかんだ。

鉄のカーテンの裏で、陸軍では20年間にわたって、ムスリム復興主義と汎イスラーム主義が根づいてきた。陸軍の閉ざされた扉の内側から漏れ聞こえることから、9.11以後、重要な問題が発生していることがわかる。ムシャラフ将軍自身が、大統領暗殺を企てたグループの背後には、陸軍高官がいたことを認めている。

ムシャラフは、いくつかの方策をとった。まず裏切った高官を裁判にかけ、政府の方向転換に非協力的な高官たちを、辞任させた。しかしこれだけでは不十分だった。ある情報源によると、南ワジリスタンの作戦以後、陸軍内の規律の乱れや抵抗運動がますます激しくなったために、政府はついに鉄拳を振り上げたのだという。

新たな作戦のもとで、過去において政府が運営していた、アフガニスタンとパキスタンのアザド・カシミールの軍事訓練所に公的に参加した者すべてが、政府の敵と見られるようになり、彼らを陸軍内から「浄化」する方策がとられ始めたのだ。

この新たな試みの基本は、訓練所で武装勢力たちと公的に接触した高官を、取り調べることである。戦闘員たちを訓練する代わりに、訓練所はその原理主義の影響力を受けてしまい、訓練所を経験した者たちが、ムシャラフ大統領やアジズ首相などの襲撃事件に加わっていたことが発覚した。これに対処するために、パキスタン史上初めて、反乱を起こした陸軍高官たちに死刑を適応した。

ある情報源によると、最初の死刑の宣告は、陸軍兵士Muhammed Islam Siddiqiに下された。彼の罪状は、ムシャラフに対して謀反を企てたことである。2002年8月にアザド・カシミールのBhimberで、ジャイシェ・ムハンマドのテロ訓練所“Maasker”で訓練を受けたこと、パスポートなしで国境を越えたこと、パキスタン空軍の人間と接触してムシャラフ暗殺を企てたこととされる。彼は部族民と戦うことを拒否したとして、南ワジリスタンで逮捕された。

陸軍はアザド・カシミールにあるすべてのジハード訓練所を閉鎖したが、ISIが管轄していたすべての訓練所は、ジャイシェ・ムハンマドのものであろうと別の組織のものであろうと、すべてISIに従っていたということは注目に値する。つまりSiddiqiは、政府に公的に派遣されてテロの訓練を受けたと言っていい。活動を禁止されたジャイシェ・ムハンマドでさえ、いまだにUnited Jihad Councilの一員であり、パキスタン政府の支持を受けている。

Siddiqiの件は、モデル・ケースのようだ。同様に何人かの兵士も、同じような裁判を受け、死刑を宣告されている。これらの事実から国家の陸軍支配者は自国を浄化するために、陸軍組織内の人間やジハード関係者をさらしものにして、パンドラの箱を開けることを決意したようだ。

Siddiqiの問題は、パキスタン陸軍内の傾向を明らかにしている。Siddiqiに対する死刑の宣告は、陸軍内に増大する反乱分子のに圧力をかけ、親米と反米の天秤を象徴している。

しかし陸軍内の謀反は今に始まったものではない。これまでも幾たび亀裂は浮上していたが、これほどまで、厳しい措置がとられたことはない。1951年2月に、陸軍高官13人と一般市民4人が謀反の疑いで逮捕されたことがある。中には、参謀長のAkbar Khan少将、空軍司令官Mohammed Khan Janjua、Nazir Ahmed少将、Siddiq Khan准将、Latif Khan准将、Naseem Akbar Khan、そしてパキスタンの有名な詩人で『パキスタン・タイムズ』の編集者、Ahmed Faizが含まれていた。共産主義者たちと連帯し、軍に反逆を企てた罪を宣告された。しかし数年後、全員釈放されている。ただし、陸軍関係者は、陸軍から除隊された。(中略)1968年1月6日に28人が逮捕された事件、1973年3月30日にZulfiqar Ali Bhutto政府に対する陰謀、1980年のハク大統領に対する陰謀など、陸軍関係者が絡んだ事件は多い。(中略)

これらの事件すべては、Siddiqiの事件よりも深刻な事件である。最近立て続けに陸軍高官たちに死刑が宣告されている事実をみると、状況がいかに深刻であるかが、うかがわれる。

smellBy Syed Saleem Shahzad
KARACHI


■パキスタン前首相の夫、裁判官殺人容疑で逮捕[041222 AP]

ブット前首相の夫は、保釈された1ヵ月後に、殺人罪の容疑で自宅軟禁を命じられた。

Asif Ali Zardariは火曜日に、ムシャラフ大統領に政治的な打撃を与えることが予測されていた野党の集会で演説するために、イスラマバード空港に到着したところを逮捕された。Zardariの逮捕で、ブットの率いる政党とムシャラフとの和解の可能性はなくなった。ブットはムシャラフが陸軍長官の座を退かないことを、非難している。

空港に集まったブットを支持する約1000人党員と警察の間で、衝突が発生した。

Zardariは後にカラチに送還され、その後自宅軟禁に入る前に、報道陣の前で声明を発表することを許された。「支配者は私のことを恐れている。私は活動をしようとしているのではない。私はパキスタンを救おうとしているのだ」と述べた。「私は再び自由になり、また民主主義のために戦う」。

Zardariは8年間の獄中生活の後に、1ヵ月前に保釈されていた。しかし火曜日にカラチ裁判所が、1996年に発生した裁判官とその息子の殺人に対する裁判に出席しなかったとして、再逮捕を命じた。保釈されてからは、2005年に新たな総選挙を要求するなど、ムシャラフに対する反対運動を続けていた。

smellFormer Pakistan premier's husband arrested in slaying of former judge


■ブットの夫、再び逮捕[041221 AP]

パキスタンの警察は火曜日に、前首相のベナジール・ブットの夫を、1996年に前裁判官とその息子を殺害した罪で、再び逮捕した。約1ヵ月前にAsif Ali Zardarihは保釈されていた。

Asif Ali Zardariはカラチからイスラマドートに帰ってきたところ、空港で逮捕された。

汚職の罪で逮捕されたZardariは、11月22日に8年ぶりに保釈された。再逮捕で、ブットの政党とムシャラフ政府との和解の可能性はなくなった。

これに先立ち、カラチの対テロ裁判所の裁判官Pir Ali Shahは、殺人事件の裁判に出席しなかったとして、Zardariの保釈を取り消した。8年前にカラチで起きた、前裁判官とその息子の射殺事件の裁判だという。Zardariはこの殺人を首謀したと疑われている。

smellBhutto's Husband Arrested in Pakistan
By B.K. BANGASH


■ムシャラフの駆け引き[041221 BBC]

5年間権力の座についたムシャラフは、軍を原理主義政党から引き離すために、主力政治政党に歩み寄っているのだろうか。それとも再び反対派を分裂させ、政治的に孤立化しようとしているのだろうか。回答は難しい。しかしパキスタンでは政治運動が白熱し、混乱期に突入しようとしているようだ。

ムシャラフが前首相のナワーズ・シャリーフの家族に、個人的に電話をかけたという事実、そしてベナジール・ブットの夫のAsif Ali Zardariを釈放した事実から、あらたな政治的駆け引きが開始された。「ムシャラフ自身が、国家的利益を考えて、国家的な和解を行なうことを決定した」と、情報相のラシッドが語った。シャリーフ氏とブット夫人は「政府と緊密な連絡をとっている」と付け加えた。

事実、ISI高官や大統領の文民官たちは、まずこの2人のリーダーやZardari氏などと会い、彼らの政党がどのような立場をとるか打診し、また2人の帰国をほのめかしさえした。

ベナジール・ブットとナワーズ・シャリーフは2人とも民主主義の回復のために互いに協力することを宣言し、ムシャラフがこの先の5年間、大統領と陸軍長官の2つの地位を兼ねることに反対を表明した。宗教政党と野党は団結し、ムシャラフに制服を脱ぐように要求して、抗議運動を続けている。ムシャラフはアメリカから賛辞を受けているが、国内ではかなり孤立化してきた。

現政権のPakistan Muslim League(PML)は軍にバックアップされた政治家で構成され、2002年の選挙で権力の座についた。しかしPMLは軍の下につくのではなく、軍のパートナーとして行動している。ムシャラフは最初のPMLの首相となったジャマリを更迭し、ショーカット・アジズを2人目の首相に任命したが、彼は政治的にまだ未熟で、存在感がない。2人の首相とPML党員たちはムシャラフと軍に常に介入され、文民政府は正常に機能していない。

《原理主義者たちは不満》

いっぽう軍とPMLの、Muttahida Majlis-e-Amal(MMA)との同盟にもまた、亀裂が生じ始めている。MMAのイデオロギー上の主力政党であるイスラーム協会はムシャラフに対抗し、制服を脱ぐように抗議運動を展開している。さらに一般に人気のあるイスラーム神学者教会のほうは、どのような政策をとるか、分裂している。

欧米のリーダーたちはムシャラフに、タリバンやアルカイダをいまだに支持しているMMAと協力することは恥ずかしいことだと、密かに助言している。それよりも主力政党であるベナジール・ブットのPakistan People's Partyやナワーズ・シャリーフのPakistan Muslim Leagueと協力するべきだ。

しかしMMAとPMLがいまだに同盟しているその理由は、主力政党に対する反感からである。前首相たちに対するムシャラフの行動で屈辱を感じたリーダーたちは多く、自分たちの権力の座もやがて奪われるるだろうと感じているようだ。

野党をはじめパキスタン人たちが期待しているのは、政治政党間の和解である。そして軍が退き、2007年の総選挙の際には、公平な選挙が行なわれることだ。ムシャラフの腹心たちは、このことがまさに実行されようとしているのだと暗示するが、問題は将軍自身にある。

誰もが、現PML党員自身もが、軍が文民政府に権力の座を譲ることなどあり得ないとみる。ましてムシャラフは、選出された首相に従う意思も、さらさらないだろう。

《権力闘争》

柔軟な声明を発表しているかのように見えるが、ムシャラフ将軍は軍の退去や首相を優先される意思は、全くみせない。ISIはいまでに政治を牛耳っているし、陸軍の警察司令官は地方を支配し、すべての決議は首相ではなく、大統領自らが下している。

ブットやシャリーフの党員たちは、ムシャラフは見せかけのゲームをしているにすぎないと見る。互いを分裂させ、主力政党とイスラーム原理主義政党たちとの間に亀裂を生じさせ、制服を保とうとしているのだ。

そしてPMLとMMAはブットやシャリーフが帰国することに神経をとがらせながらも、たとえ自分たちが失敗したとしても、陸軍は自分たちを排除したり、権力を手放さないと確信している。

最近の政治的混乱をみると、軍は中期的・長期的支配を保持できないことを示している。これまで3人の陸軍将軍がパキスタンを支配したが、彼らが一度現場から退場すると、もはや軍は国家を支配し続けることはできなかった。また選出された文民政治家は一度たりとも、任期を完了したことがない。

1999年にムシャラフは、「本当の民主主義」を実現すると宣言して権力の座についた。今のところ、これに失敗している。しかし軍は永久に支配することはできない、ということに気づく、始めての将軍になるだろうか。

hoonMusharraf's power play
By Ahmed Rashid in Lahor


■パキスタン、武装勢力6人逮捕[041220 AP]

月曜日に警察はラホールで、6人のイスラーム過激派を逮捕した。今回の逮捕で、重要手配者となっているリビア人アルカイダの逮捕につながることが期待されている。リビア人のAbu Faraj al-Libbiは、ムシャラフ大統領暗殺の首謀者だといわれている。

逮捕された6人はすべてパキスタン人で、al-Libbiの腹心であるスンナ派過激派のメンバーMalik Tehsin(31)が含まれているという。Tehsinはアフガニスタンのテロリスト訓練所でal-Libbiと出会い、リビア人にさまざまな便宜を計ったといわれる。

Tehsinはal-Libbiのために、家を3件借りたという。そのうちの2件はラワルピンディにあり、そこでムシャラフ攻撃を計画したらしい。

アラブのテレビでは、今回の逮捕者の中にザワヒリがいたと報道したが、パキスタンの警察はこれを否定している。逮捕者のなかには、アルカイダ幹部はいないという。

Tehsinは過激派ラシュカレ・ジャングヴィとハラカット・ジハーデ・イスラミのメンバーで、シーア派イスラーム指導者とその娘をラワルピンディで殺害した容疑がかかっている。別の3人のパキスタン人、Amir Maqsood別名Abu Haroon、Mahmood Ahmed、Sajjad Haiderと車を運転中に逮捕された。

TehsinとMahmood Ahmedは去年、ラホール空港をミサイルで攻撃することを計画していたと告白したといわれる。

hoonPakistan Arrests Six Suspected Militants
By ASIF SHAHZAD


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