【2008年12月15日〜12月21日】
●(前略)
●最近武装勢力たちが、パキスタンのカラチに荷揚げされたアフガニスタンのNATO軍への物資が輸送される補給路を妨害しているために、アメリかは他のルートを探している。
●カラチのルートの他に、3つのルートが考えられる。まずは中国の上海からタジキスタン、そしてアフガニスタンに至るルート。次に陸路でロシア〜カザフスタン〜ウズベキスタン〜トルクメニスタン経由、アム・ダリア川を経てアフガニスタンの国境までのルート。そして最短距離はイラン経由である。
●ロシアからは、道路と鉄道でアフガニスタンの国境までつながる。中国からのルートは、新疆自治区のウルムチからアフガニスタンに入る。この他に最近ではカザフ国境のコルガスからアルマティ、そしてカシからキルギスタンのルートがある。両方とも、中国から中央アジアを結ぶルートで、アフガニスタンへの入り口であるアム・ダリア川に沿った町、ウズベキスタンのテルメツに至る。
●しかしワシントンは、これらのルートには目を向けていない(中略)。アメリカは、3つのことを考えている。まずパキスタンの将軍たちに、パキスタンを通過するNATO軍車列に関する問題を起こさないように圧力をかけた。これはF-16戦闘機の売却の約束との交換条件になる(中略)。
●次にアメリカは、テヘラン、モスクワ、北京とは関係ない、アフガニスタンに至る新たなルートを考えている。これは、ロシアとイランに対する政策を強化するものでもある。
●アメリカは、南コーカサス経由でアフガニスタンに入る新たなルートを計画している。黒海経由、グルジアの港ポティに物資を送り、そこから陸路でグルジア〜ゼルバジアン〜カザフスタン〜ウズベキスタン経由、アフガニスタンに物資を運ぼうとしている。
●この計画がもし実現されれば、ワシントンにとって画期的なことである。アメリカはアゼルバイジャン、カザフスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンと、軍事協力を行なうことになる。
●さらにこれらの国々を、NATOのパートナーシップ計画に接近させることになる。特にグルジアには、このルートにおいて重要な位置を占めるために特権的なステータスが与えられることになり、NATO国家への参加には有利になるだろう(中略)。
●3番目に、ロシアのKommersant紙が12月12日に報道したように、アメリカはアルマトイへの進出を模索している。「アメリカが中央アジアの国家と話し合いを行なっていることから、新たなプロジェクトが開始されていることを示す。先週カザフスタンの国会が、アフガニスタンにおけるテロとの戦争に協力する声明を出した。これによりアメリカは、緊急時にアルマトイ空港を使用することができることになった」。
●こうしてアメリカは、アフガニスタンにおけるロシアの影響力を縮小しようとしている。興味深いことに、アメリカはNATOに、ロシアと輸送路に関する話し合いをすることを許可した。モスクワは、これをなかなか断わることができないだろう。
●アメリカは、うまいことをやった。両世界をうまく利用している。NATOはロシアの協力を得るいっぽうで、アメリカは集団安全条約機構に風穴をあけるとともに、コーカサスと中央アジアにけるロシアの影響力をなくそうとしている(後略)。
●ハイデラバード刑務所で、ダニエル・パール殺人事件の容疑者が作ったテロ組織が暴かれ、スィンド政府が警察幹部と刑務所関係者を更迭、携帯電話はSIMなどが押収されていたことがわかった。
●内務省情報源が水曜日に語ったところによると、収監されているテロリストが11月の2週目に、ムシャラフ将軍の携帯電話に電話をかけて自爆者を送り込むと脅迫したという。
●携帯電話のかけ主がムシャラフ元大統領に、「おまえを追っている。死ぬ覚悟をしろ」と脅迫したという。この通話は、ハイデラバード中央刑務所にいるシェイク・オマルがかけてきたことが明らかになった。シェイク・オマルが、ラシュカレ・ジャングヴィの過激派と電話で連絡を取り合いながら、元大統領を暗殺しようとしていたと思われる。
●オマルの独房を調べたところ、携帯電話3台、バッテリー6個、SIM18枚が押収された。さらに電話履歴を調べたところ、パキスタン国内の元ジハード組織や、ラホール、カラチ、ラワルピンディ、ペシャワルの親戚に電話をかけていたことがわかった。
●さらに携帯電話履歴から、ダニエル・パール殺害に関与したとされる、2007年5月にカラチ警察に逮捕されたアタウル・レーマン別名ナイーム・ブハリとも接触していたこともわかった。スックル中央刑務所のナイーム・ブハリの独房からも、携帯電話とSIM3枚が発見され、オマルやラシュカレの仲間と連絡を取っていたことが明らかになった。
●ナイーム・ブハリの取り調べから、ラシュカレの工作員たちはシェイク・オマルより、ラワルピンディからカラチで車を使用した自爆攻撃でムシャラフを殺害しようとしていたことがわかった。過激派たちは、ムシャラフの行動を監視し、攻撃する機会を待っていたという。
●この暗殺計画が明らかになったために、ムシャラフは11月22日にロンドンを訪問することにした。すでに帰国しているが、警備上の理由から、現在もアーミー・ハウスを使用している。
●(中略)さらに驚くのは、オマル・シェイクは、エリート特殊部隊の元総司令官だったアミール・ファイサル・アラヴィ中将ともコンタクトを取っていたことである。アラヴィは11月19日に、何者かに暗殺された。
●最近『Sunday Times』紙は、タリバンと取り引きをしたパキスタンの将軍の名前を明らかにすると脅迫していたアラヴィ中将は、自分が暗殺されることを予測していたと報道した。
●オマル・シェイクは、なぜアラヴィとコンタクトを取っていたかは今のところ明らかにしていないが、ムシャラフの自伝「In the Line of Fire」の中で、オマルはLondon School of Economicsに在籍時代、英国諜報組織MI6に雇われていたと書いている。
●ムシャラフによると、オマルはMI6のさしがねで、バルカン半島のジハードに参加した。「二重スパイになった可能性がある。90年代に英国人旅行者3人の誘拐殺人と関与したとしてデリーで5年服役したあと、2000年のインド航空ハイジャック事件の人質と引き換えに、ジャイシェ・ムハンマド責任者のモーラナ・マスード・アザールとともに釈放された」。「その後2002年にダニエル・パール誘拐に関与したとして、ISIのハンドラーだったイジャーズ・ハッサン・シャー元将軍に投降した」。
●(中略)2003年のムシャラフ暗殺未遂事件にも、オマルが関与していたと考えられている(後略)。
●水曜日の朝、南ワジリスタンのワナで、アフガニスタンにいる米軍のためにスパイ活動をしたとして、拉致された準軍隊兵士が殺害されているのが発見された。
●最近北ワジリスタンのミラリにあるフシャリ・トリヘール村では、アルカイダ幹部のアブ・ラティス・アル・リビが殺害された件で、スパイ行為をしたとして国境警察隊員を含む4人が殺害されている。
●関係者によると、セポイのイスラマル・ハーン・ブルキが水曜日に、ワナのバス停で武装した男たちに拉致された。銃で撃たれたハーンの遺体が、ワナの道路に放置されていた。遺体には、アメリカのために「ムジャヒディン」をスパイした人間は、同じ運命に遭うと書かれたメモが残されていた。この他にさらに4人の男が、裁きを受けることになっているという。
●パキスタンのタリバンが、アルカイダ幹部の死に至った情報を提供したという5人の男を「裁判」にかけ、殺害した。
●北ワジリスタンで1月19日に、アメリカのミサイル攻撃によりアブ・ライス・アブ・リビとともに11人が殺害された。タリバンによると、パキスタン政府と地元の「スパイ」が、アメリカに協力したという。
●タリバンによると、殺害された男の1人はピール・マールで、彼の「告白」によると、「アル・リビが泊まる予定だった家に、自家製の爆発物を設置した」という。これらの告白を映したビデオが、タリバンにより『BBC』に届けられた。
●ピール・マールは、パキスタン陸軍関係者から指示を受けていた、フェローズ・ハーンの下で活動していた。また他の4人の地元民の告白や、首を切られて処刑される様子も収録されていた。北ワジリスタン政府によると、男たちの遺体が発見されているという。
●ムジャヒディンはこの地域の「スパイ」を把握しており、厳罰に処するという。
●パキスタン陸軍報道官は、処刑された男たちが軍と関係があったことを否定した。
●火曜日に、幹部司令官を含むタリバン武装勢力7人と兵士1人が、パキスタンの部族地帯で銃撃戦により死亡した。
●火曜日の早朝、モーマンドで「激しい銃撃戦」が3時間近く続いたと、地元の準軍隊が述べた。「地元司令官を含む、武装勢力7人が死亡した。国境警察隊員1人も、殉死した」という。
●地元の治安関係者によると、タリバンが検問所を襲撃したあと、銃撃戦となった。「報告によると、ザール・ムハンマド、別名606が死亡した。このほかに武装勢力が少なくとも5人負傷した」という。
●毎月、数千人のイギリス人ムスリムが休暇になるとパキスタンを訪れ、家族や友人たちを訪問する。ほとんどがイードなどの宗教的に重要な祭日を祝ったり、家族の出身地でただ時間を過ごすだけだ。
●しかし少数だが、悪意を持ってイギリスを出る者もいる。両国を行き来する英国パスポート所持者40万人の「ブリット・パック」の中には、パキスタンに到着するや否や、消えてしまう者もいる。数ヵ月後、訓練されたテロリストとして、再びイギリスに戻る。
●(中略)若いイギリス人ムスリムの行動を正確に把握することは難しい。しかし、イスラーム過激主義を教え込むサウジ資本のマドラッサに行く者がいることは確かだ。原理主義化の第一段階を経た者は、FATAにある訓練所に行く。そこで簡易爆弾の製造法を教わる。これらは、自爆攻撃やアフガニスタンにいる同盟軍を攻撃するために使用されるのだ。
●(中略)そしてさらにその中の一部の者が、「ハード・コア」アルカイダに共感してアフガニスタンを訪れ、英軍などの同盟軍に対してジハードを行なう。カンダハルには、イギリスに住む英国パスポート所持者がいると、アフガニスタン南部の英軍司令官、アド・バルター准将が述べた。RAF Nimrodスパイ偵察機が、武装勢力が、ヨークシャーやミッドランド訛りの英語で会話をしているのを聞いたことがあるという。
●別の英軍関係者によると、イギリス人ムスリムが英兵を攻撃している証拠が多数あるという。「英軍を攻撃するという意図を持って、パキスタンからアフガニスタンに入ってくる。市民戦争に巻き込まれたような気分だ」。
●イギリス人ムスリムがジハードに参加する例は、まだまだ少ない。「今のところ大きな脅威ではないが、注意が必要だ」と、治安関係者が述べた。
●イギリスの安全に対する本当の脅威は、イギリスにある。イギリスの町を歩き回る、イギリス生まれで、完全に訓練されたアルカイダの歩兵が要注意である(後略)。
●月曜日にアメリカのミサイル攻撃で、少なくとも武装勢力2人が死亡した。治安関係者によると、「北ワジリスタンのミランシャー郊外に米軍がミサイルを発射した」という。このミサイル攻撃でさらに3人が負傷した。無人偵察機によるものなのか、アフガニスタン国境にいる米軍によるものかは明らかではないという。
●ミサイルは月曜日夜、ミランシャー郊外のトビトールヘール村の地元民グンチャグル・ワジールの家に命中したという。住民によると、朝からミランシャー上空を偵察機が低空飛行しながら旋回していた。この家には武装勢力たちが出入りしていたと、住民が述べた(後略)。
●パキスタン北西部のトラック運転手たちは、治安悪化のために、アフガニスタンにいるNATO軍と米軍主導軍へ物資を輸送するのは中止すると述べた。
●タリバンがトラックをハイジャックしたり放火し始めたために、仕事を中止するという。アフガニスタンにいる外国軍への補給物資の75%が、北西辺境州を通過する(中略)。
●準軍隊にエスコートされた運転手たちは、これが最後の補給物資を運ぶ車列だと述べた(中略)。Khyber Transport Association社長のシャキール・アフリディによると、治安状況のために続けることができないという。「すでに物資が搭載されてしまったために、今回だけは輸送を行なう」。「しかしタリバンによる攻撃が続いているために、今後は同盟軍に物資を運ぶ車列には加わらない」。「再開するためには、政府が状況をコントロールしなければならない」と述べた(後略)。
●アフガニスタン南部におけるアフガンとNATOの合同作戦で、タリバン指導者を含む抵抗勢力40人を殺害したと、政府関係者が月曜日に述べた。
●木曜日にヘルマンド州のナディ・アリとムルジャ地域で戦闘があったと、ヘルマンド州知事報道官のダウード・アフマディが述べた。アフマディによると、武装勢力40人が作戦で死亡したが、政府関係者は7人の遺体だけを回収し、埋葬するために長老に引き渡したという。アフマディによると、諜報情報をとおして、この他33人が死亡したことを知っていると述べた。
●犠牲者の数は確認されていないが、NATO報道官は、ヘルマンドで合同作戦が実施されていることは認めた。
●犠牲者のなかには、2つの地域の武装勢力会議責任者だったタリバン指導者、ムッラー・サリームがいる(後略)。